第十一話 訓練場

「兎の獣人?」


カナンに兎に獣人が何人いるか聞いてみた。

ここに来ている兵士で該当者は1人。

あの人、リリンの親戚のお兄さんだ。


「犬獣人が大半なのは、気性だなあ。」


命令系統に従うのに抵抗が少ないらしい。

「そ。いう団体行動できねえ奴は、冒険者になることが多いな!」


チラッと、ロードを見るのを忘れないカナン。


前に行っていた訓練場、その許可が降りた事から

3人で向かっているところだ。


格好は外に出た時より、かなり軽装。

動きを確認できるような格好に荷物はなし。


騎士の集まる食堂を通り過ぎ、

中庭とは違う通りをズンズン進む。


(この辺に広い場所などあったっけ?)

門まで行けば、広い場所があるけど訓練場とは言わない。


「こっち。」

楽しそうに案内するカナンは、大きな門の前に。


ギィいと音を立てそうな大きな扉が開いて行く

先には階段。カナンが構わず進む


「地下へ続く階段だ。」

驚くセリに手を差し出すロードはエスコートして下へと向かった。


かなり長い。

武器庫のような部屋を通り過ぎ、終着点。


「明るい」

そう呟いたセリの目の前に、訓練場があった。

「地下訓練場へようこそ!」



高い天井、煌々と灯りがあり

広く、部隊の全員が並べるくらいらしい。


「凄い場所」


首が痛くなりそうな見上げる天井。

地下を掘り、魔法で固定されたシンプルながら力強い洞窟のようで。

だたっ広い土の訓練場が広がっていた。


「結構、広いんだな」

ロードも来るのは初めてらしい。


演習や雪の降る間の訓練として使われているのか?

雪が止んでいる今日は、使われないのかもしれない。


「じゃあセリちゃん、手合わせしようか?」

訓練場の中央へ歩き、カナンが誘う。


コクリと頷いたセリは、内心ワクワクしている様子だ。

ロードはそんなセリを送り出した。


平らな中央の広い場所で、身長差のある2人が交差する。

バシ…バシッと音がこだまし始めた。


くるっと回るセリを、余裕で捌くカナン。

転がして遊んでいるようにも見えるが、セリが楽しそうなので

見守るロード。


完全に遊んでいる顔だ。

魔法を使わないので、ほんとに戯れ合っているようで。


少々もやっとするロードだが、余裕の態度で見ている。


セリの息が上がってきた頃


誰か来た事に気づいて、そちらを見るロード。

その方向は、来た方向とは違い壁の続く、横穴。


ブーツのような重めの音、

歩幅が狭く、せっかちにこちらに向く


「ん?誰がおるんだ?」


しわがれた声の男。

小柄な獣人か?


その声の高さ、高年齢な男が姿を現した。


ドワーフの男が1人、様子を伺うように

セリとカナンを見て、ロードと目が合った。



「誰じゃい?」

その声は、ただ疑問を響かせるだけで、

警戒は必要なさそうだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る