第17話 進路

落ち着いて、誤解を解いた後


お茶を飲んでまったりしたところで、ロードが地図を取り出した。

この辺りの道が詳しく書かれているようで、図書館にあったものより距離感がわかる。


「今いるここが“極北の城”と呼ばれている場所だ。」


セリは自分達の行軍が、予定の道よりズレていた事が今わかった。

(半分遭難してたのか。)

自信満々な坊ちゃん上官を思い出し、イラッとしたので頭の中から追いやった。


「王都がこっちなんだ。」


指のなぞった先は、森の縁を西に沿って行くルートのようだ。

(孤児院に帰りたいんだけどなあ。遠い)


簡易に描かれた森、その東にある筈の帰る場所を思った。


「俺と王都に行ってみないか?」

振り返ってロードの顔を見る。


戦中の国の人間が、行って良いところではないだろう。

「議長もこの話をするのは知っている。セリに色々見て欲しいんだと。」


今の保護している人の許可を得ていても、入国が拒否されると思う。


「へえ、魔法学校にでも通わせる気かね?」

「魔法の学校?」


カナンの言いようは、王都でも有名なところなのだろうか。


「人間は魔力がまあまああるだろ?それを鍛える学校で、他の種族も通っている。」

「エルフとか通う、名門だろー?」


ロードの説明に、カナンが参加した。


「魔法?」

議長エルフのような魔法は、無理だと思う。

そもそもセリは、攻撃魔法と呼べるものは使えない。

火をつけたり、一杯の水を出したりする生活魔法の程度だ。


「セリちゃんさ庭に出た時、存在を薄くしてたじゃん?あれって闇魔法じゃねーの?」


ロードが庭で暴れた時の事か。

「あれは、


「魔法じゃないの?」

「どう違うんだ?」


「魔法の…出来損ない?」

魔力を込めるが、発動しない時もあるし気休め程度らしい。


「安全を祈った風習で、孤児院の古参のシスターに教わった。皆んなやれる。」


魔術と言われるもの、占うものもあったけど

強いものじゃない。


(ふーん。あの感じが気休め程度、ねえ?)


実際、ロードに気づかれにくく、カナンの目を掻い潜って隠れていた。


あれは魔法でもなかなかできない力だ。

それにしては、評価が低い。態と?便利だと認識されずに、チカラになるように。


逸材?

(12歳って言ったっけ。まだ鍛えられる年齢だな。)

カナンは報告の内容を頭の中でまとめ出した。



セリの方は、一緒に王都へ行くとは答えられない。


兵士になったのは徴兵団が来たからだった。少し余裕があるように見える孤児院のことが兵士に伝わり、連れ出された。


狩りができて人間のセリが、自分で矢面に立った。


院の子には、『隣国に行け兵士にはなるな』と言ってある。獣人の血を引いていれば、迫害の対象になってしまう。



(会えたりするかな?)

旅だって行った兄弟、姉妹達を思う。


王都は広いから無理か。いや、

有名になったら? 


会いに来てくれるかもしれない。


(そろそろお話ししないとね。)

そう思うも、ロードに明確な答えは返せなかった。

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