第10話 見張り

ロードとの面会が延びた。

あの様子で、来ないのは意外だった。


(上層部のストップがかかったのか、任務が入ったとか?)


来ないなら仕方ない。そう考えていたセリはベッドの上。

遊び相手をしていてコケたせいで、「出歩くのを控えてね」と言われて、暇。


種族による筋肉量の違いと、反応が遅れたための怪我。

(打身になっただけなのに。)

成長期の慢性的な疲労が、改善されつつも体が疲れを訴えていた。


それからは

寝る時間が早く、起きて日暮れって時もあった。

(どーなってるんだろう?)こんなの寝られる時間があって、寝ていられるのが不思議だった。


「疲れが出ているのよ。」と医師の話だが

セリは、動いていない方が落ち着かない。


この建物は魔導具で、屋根に雪が降り積もることはないが

孤児院では降り積もった雪を降ろす頃。


ソワソワする気持ちと、寝るだけの日が過ぎていた。

怪我はもう良くなっている。


気分転換ということで

昼寝は場所を変えて子供達の中で、もふもふの中でぼんやり考えた。


(そろそろ、行動にうつす時期かな?)

年齢がバレると動きづらい。隣国からの情報でバレる線は薄い

ただの下級兵だ。今頃、脱走兵扱いかなあ。


“逃げれんなら逃げとけ”って時折、言ってもらってたからな。

最近、よく思い出してる。

思い返したって特に良い事もないし、夢では寒さを感じない。


(夢は夢。)

昼寝をした日には、夜寝つけず目が覚めている。

動きたい気分だし


部屋を抜け出し、暗がりの図書館へ侵入した。


薄着を着こんで、灯りの確保に光石を持つ。

ぼんやり暖かに光る特性は、なんとか本が読めるくらい。

子供の部屋にあるくらいに安全な鉱物。


魔法は怪しまれそうなので、“バレ難いおまじない”をしておく。

星明かりのが明るい時もあったが、今日は曇り空。


文官の人がたまに居るのでやり過ごし、本を見ようと歩く。


「何してる?」見回りの人だった。


「夜に入っちゃ駄目だろう?」

文官の出入りは良いが一般開放はしていない時間に子供がいる。

お説教が続くが、早く切り上げたい。


「なら、あっちの人に言って!」

隠れている男の方を指差す。


獣人にはわかるのか、すぐに目の前に行った。


「所属は?」尋問中


見張りに気づいていたが姿を見たのは初めて。

犬?獣の耳のある


「廊下で見かけて声を掛けそびれたんだ。子供は寝ないとな?」


にこやかな笑顔が、態とらしい。


(“こう言うタイプは間諜だ”と言われてたのまんまだ。)


不審に思ったから、見回りの人が図書館の近くを通るときに来た。

軍関係者、たぶん裏方の人。



結局、注意受けて2人で追い出された。


ケロッとした顔に

「バイバイ、おじちゃん。」


そう言えば固まった。

可哀想にまだ若いよね。


最近ずっとついて来た人の顔も確認できた。


意趣返しもできたし

特に会話もなく、セリは白い部屋に戻っていった。

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