回想④

 幼い私がお母さんに手を引かれ、稲荷神社の境内から去っていく。

 私はセーラー服を着た女の子との追いかけっこに大いに満足し、ほくほく顔だ。


 私はお母さんと一緒に進み、ふと足を止めた。

 それから後ろをふり返り、小さな手をふった。


「おねーさん、またあそぼーね」

「いいわよ」

「ぜったいだよ。やくそくだよ」

「分かった、約束する」

「おねーさん、ばいばーい」

「ばいばい、旭ちゃん」


 女の子は口元に優しい笑みを浮かべ、しなやかな手をふり返す。

 幼い私はよほど嬉しかったのか、幸せそうにお母さんの顔を見上げて笑う。


 女の子は、私の背中をずっと見送りながら、先ほど自分の口から発した言葉を噛みしめるかのように、もう一度つぶやいた。




「ばいばい、旭ちゃん……」


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