回想①
美幽センパイと一緒に稲荷神社に立ち寄った夜。
私は夢を見た。
幼い私が、お母さんに手を引かれ、稲荷神社の境内を歩いている。
やがて敷地の奥にブランコを発見した私は、お母さんの手を離れ、てくてくと走っていく。
ブランコに飛び乗り、早く早く、と明るい声でお母さんを急き立てる私。
お母さんはそんな幼い私に優しく微笑みかける。
それから私の後ろに立つと、小さな背中に手をそえ、ゆっくりと押し出した。
ブランコが前に大きくこぎ出される。
私はキャッキャと歓声を上げながら、宙を蹴り、さらに勢いを加速させる。
澄みわたった高い青空の下、こんな幸せな日々がずっと続くものと信じて疑わなかった。
もうけっして戻れない、遠い日の記憶。
「……お母さん……」
私の口から、ぽろり、と言葉がもれる。
ベッドで眠る私の頬を、ひと筋の涙が伝った。
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