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「美咲……。」


「……どうしたの?」


「いや、こんなことを今美咲に言うことではないかもしれないけど……。」


圭佑さんは何かを考えるように口元を覆う。

何だろうと、私は首を傾げた。


「美咲が大変な思いをして産んでくれたこと、本当に感謝してる。」


「うん。」


「でも有紗は……。有紗は一人で頑張ったんだなと想像したら、申し訳なさでいっぱいになった。……子供が生まれてくるのがこんなに大変なことだとは思わなかった。……有紗に謝りたい。」


「……圭佑さん。」


「……ごめんね、美咲。」


私は圭佑さんに手を伸ばす。

そんな風に思ってくれたことに、私の胸はぎゅうっとなって、涙が込み上げてきた。


「ごめん、美咲にこんなこと言うつもりじゃ……。」


「ううん、いいの。私も同じ事を思ってた。お姉ちゃんは一人ですごいことをやってのけたんだって。私も圭佑さんと同じ。妹なのに何もしてあげられなかった。……だから私は子供達二人とも、大切に育てるよ。」


「俺は有紗にしてあげられなかった分まで、美咲と子供達を幸せにすると誓うよ。」


お互い涙が滲み、二人でそっと涙を拭き合った。

圭佑さんが私をぎゅっと抱きしめる。

それに応えるように、私も圭佑さんの背中に手を回した。

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