43

と、同時にかかってきた電話に私は泣きそうになった。


「もしもし……。」


「美咲?今どこにいる?」


「まだ家にいる。……お腹痛いよ。」


「すぐ帰るから。先に病院行く?」


痛みの感覚はまだ10分だ。

これは陣痛の始まりの目安だとマタニティ教室で習った。ここから産まれるまでまだ何時間もかかることも、特に初産は時間がかかるということも、知識としては知っている。


「待ってるから早く帰って来て。」


「わかった。」


まだこれから出産という大仕事が控えているのに、すでにめげそうになっている自分を必死に奮い立たせる。


グズグズと半分泣きながら待っているとすぐに圭佑さんは帰ってきてくれ、私は圭佑さんに支えられながら病院へ送ってもらった。


圭佑さんが横にいるというだけで安心感が全然違う。結婚してすっかり頼りきってしまっていることに、今更ながら気づかされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る