25

花束を持って墓園に行くと、すずはとたんに張り切りだした。


「すずがおみずやるからね。すずがもつの。」


柄杓を得意気に振り回し、やる気満々だ。

花を活けようとすると、


「あ~!すずがやるっ!」


蝋燭を立てようとすると、


「すずがやるのー!」


なかなか前に進まない。

この年頃は何でも自分でやりたがると、すずの担任の保育士さんが言っていた。それも成長なんだそう。


「おみず!おみずやる!すずがやる!」


すずは柄杓を持って水を上手にすくうと、いきなりバシャンと水を撒いた。


消える蝋燭。

濡れる服。


「あーーー。」


私と圭佑さんは頭を抱えるが、すずだけはゲラゲラと笑っていた。


「ぬれたー!キャー!あはは!」


天気が良く爽やかな風が吹く墓園に、すずの明るい声が響いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る