第77話 決着②
「だが、それは無駄なことだったな。では……終わりだ! マサト!」
マオは右手を俺にかざし、その手に魔力を込めた。
魔王の紋章のある右手で。
俺はニヤッと笑う。
「ああ、終わりだな……お前の負けで」
「は? 何を言っている。悪いが俺の魔王の紋章を再び奪おうとしているのかもしれんが、それは無駄だぞ。俺がそれを警戒しないとでも思ったか? この距離ではお前は俺に近寄ることもできずに塵となる!」
「それはどうかな? この距離なら十分だ。それに俺はお前を信じていたぜ。奏さんとオデットさんがやられて、俺だけになれば必ず油断して俺に近づいて来るって。マオ、やっぱりお前は魔王らしくないわ。さっきも今も、少し、俺に気を使ってた。せめて苦しまずに、なんて普通の魔王なら言わねーもんな」
そう言い俺もマオに右手をかざした。
「フン、何の冗談……な! 何!? 体がうまく動かん! 何だ!?」
マオの表情が驚愕に変わった。
俺は何も言わずにマオに走り寄り、マオの開いている右の手のひらに手をかけた。
そして、そのまま後方に超人的な跳躍で飛び去る。
俺のその動きにマオはさらに驚く。
そして俺は振り返り、俺の右手につままれた魔王の紋章を見せつけた。
「マサト!!」
「俺の動きに驚いたか? じゃあ、種明かしだな」
俺はそう言い、右腕の袖をまくり上げた。
「……! その二つの紋章は!?」
「勇者の紋章だよ。一つは俺の……もう一つは……奏さんのだ」
「!? まさか……」
「そのまさかだよ。俺の能力は相手の紋章とその能力を奪える。だが、それは魔王だけではなかったんだ。紋章を持つすべての者の紋章を奪えるんだ、もちろん、勇者のもね。それで奏さんには事前に紋章を借りてたんだよ。それでさっき大木の後ろに隠れたときに自分につけた。一度、俺の体につけるまでは、力は移行しないみたいだからな」
「な、な……!」
「今、マオが動きづらいのは奏さんの能力、時空魔法だ。魔法発動中は他の剣技とかは使えないみたいだが、身体能力までは下がらない。だから、今の俺は奏さんばりに動けた。それと魔王のような力の強い奴には数秒しか効かないらしいんだが、まだ、効いているところをみるとお前もそこそこ消耗してたんだな、マオ」
「クッ!」
「じゃあ、お前に動かれると厄介だからもう終わりにするぞ!」
「マサト! や、やめろぉぉ!」
途端にマオの拘束が解けた。
マオは自分の手のひらに急速で魔力をため込み、俺に魔法を繰り出そうとすると同時に、俺はマオの魔王の紋章を 自分の勇者の紋章の上に重ねた。
俺の勇者の紋章が光り輝き、閃光を放つ。
「こ、これは!?」
俺の紋章に魔王の紋章が溶け込み、俺の紋章の外周部が形を変えていく。まるで、紋章を吸収し、己がものにしていくように。
「マサトォォォォォォ!」
直後……大きな光の柱が王都の上空に向かい解き放たれた。
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