君の気持ちを教えて

NOTTI

第1話:笑顔のままに

 2020年夏、姉夫婦に念願の子供が生まれた。しかも双子の男女だ。姉は結婚してすぐに男の子を身ごもったが、1年の結婚生活の末離婚していた。理由は元夫の暴力だった。彼女はその際には働いていたが、元夫の日常的なドメスティックバイオレンスにより、精神的に追い込まれて体調を崩し、仕事を休職する事になった。そのため、給与は減額となり、シングルマザーとして子供を養うには困難な状態になっていった。そのため、区の児童福祉課に相談し、経済的な理由から生まれて間もなく児童養護施設に預けられた。今も彼は養護施設から我が家に帰ってきていない。


実は彼と血縁関係にあるのは彼女だけだ。そのため、子供を引き取るには子供を扶養できるという証明と虐待等の子供に対する身体的暴力をしないなど多くの誓約をしなくてはいけなかったため、子供を取り戻すにはかなりの時間を要していた。今の旦那さんと出会ったのも彼が同じ会社に勤めていて、偶然彼女が参加していた飲み会に同席していたのだ。ただ、彼は営業部営業1課、彼女は総務部経理課と勤務している課は違ったが、月に2度各部内の旅費等の精算処理のための書類を取りに行っていたため、顔を全く知らない間柄ではなかった。実は彼は生まれてから恋愛ということをしたことがなかった。そのため、最初は彼女が怖かったという。彼は初恋が小学校の低学年の時に班活動で一緒の班で面倒を見てくれていた4歳年上のお姉さんだった。彼女は低学年の親御さんから面倒見が良かったと評判のお姉さんだった。彼女が優しくしてくれていたことで彼は女性に対する恐怖感が少し和らいだという。ただ、彼は身体が弱く、ちょっとしたことで怪我をしてしまうなど他の子達から見るとどうしたらそうなるのか疑問しかなかったようだ。


 子供達と退院して来る日が決まったが、同時に来月には3年ぶりに息子が家に帰ってくることになった。子供達は異父兄弟・姉妹としてこれから過ごしていくことになるため、母親としては少し心配な面もあるが、パパになる旦那さんとも少し前に会っていたため、ハードルとなる部分としては今まで一人っ子として育ってきて、母親の姿も1年以上見てこなかったため、家族という環境に順応するまでにどのくらいかかるのかという点だ。特に長男にとっては養護施設で育っているため、自分より年上のお姉さんやお兄さんには可愛がられるが、自分よりも下の年齢の子供を扱ったことがないため、生まれたばかりの弟と妹とどのように距離を詰めていくのか、どのように接するのかを両親が教えていかなくてはいけないのだ。


 彼が初めて家に来たとき、やはり笑わなかった。ただ、時間が経って彼の心から笑って過ごしたいという気持ちが出てくるだろうか?そして、両親の愛情を時間がかかっても受け入れてくれるだろうか?と不安は尽きなかった。ただ、息子にとって母親という認識はあるものの、彼は“ママとパパから捨てられた”という心の傷がどこか親子関係を築く上で弊害になってしまっているのだろうか?


 慣れない環境で過ごしていく彼とこれから笑顔で過ごしていきたい。

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