マリー~私のたった1人の友達~

御都米ライハ

第1話 イマジナリーフレンド

「ねぇ、マリー。貴女はいつまで此処にいるの?」


 平日の昼下がり。自室にて私は彼女に質問した。


朱莉あかりが満足するまでよ」


 彼女はコロコロ笑いながらそう答えた。

 ベッドに腰掛ける彼女の名はマリー。ウェーブがかかったブロンドの長髪に青い瞳を持っている。恰好はフリルが沢山ついたゴスロリ服で、さながら動く等身大の西洋人形といった風情の彼女。もし私が子供だったら無邪気に喜んでたかもしれないけど、あいにく私はそんな年齢じゃない。


「私だって好きで此処にいるわけじゃあないのよ?」

「知ってる。でも、いつまで居られるのか気になって」

「あら、それは早くいなくなって欲しいってこと? それとももっと長く居て欲しいってこと? ふふ、だとしたら、嬉しいわね」


 悪戯っ子のように笑うマリー。私は何も言えなかった。

 私は彼女をどう思っているんだろう。いつの間にかいて、いつの間にかいることに慣れてしまった少女。日常に溶け込んでしまったからこそ、私は彼女について何も考えていなかった。

 だから、素直に言う。


「わかんない」

「そう……だったら、きちんと考えなきゃね。私は貴女が貴女を知るために


 マリーが足を組む。その最中に布擦れの音がなかった。フリルが沢山ついた服を着てるのに。  

 その不気味なまでの静けさはマリーがその場にいないように思わせた。そして、それは錯覚でも勘違いでもないのです。

 だってマリーは私のイマジナリーフレンド実在しない友達なんだから。

 誰もが一度くらいは耳にしたことがあるだろうその単語。分かりやすく言えば、幼児が生む架空の友達のことを言う。

 だからマリーは私にしか見えない少女で、実在しない友達なんだ。


「もし貴女が迷うなら、いつだって助言をあげる。でもね、答えだけは自分で考えなくちゃいけない」

「答え……?」

「そう、答え。私が生まれた理由と貴女が私に託した何か」


 マリーは挑みかかるように、あるいは優しく包むように私に告げる。

 

「朱莉が私に求めたものは何? それが分からない限り、貴女のたった1人の友達である私は貴女の前から消えることはないわ」


 

 

 こうして日狩朱莉ひかりあかり14歳の自問自答が始まった。

 少し肌寒くなり始めた11月の出来事だった。

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