井戸の底

AOI

第1話 第一夜 『向日葵の種』

≪突然の出来事≫


わたしは意識を失い

気が付くと

『井戸の底』に立っていた


『井戸の底』は

鼻につく嫌な臭いで満ちていて

とても耐えられそうにない・・・


わたしは叫んだ!

何度も何度も 叫ぶが

『井戸の底』は深い為 

誰にもわたしの声は届かない!


『井戸の底』は

光の届かない闇の世界

この世の世界とは

かけ離れている


わたしは

華やかな世界に長くいたが

無機質な世界に放り出されると

これまで築いてきた

人生の価値観が 

まるで意味をなさない・・


私の人生とは

一体何だったのだろう?


◆◇◆◇


≪数時間後≫


幼い頃の記憶が

鮮明に思い出されていった・・・

楽しかった誕生日会

サンタさんからのクリスマスプレゼント♪


しかし苦い思い出が

ひとつだけあった!!


≪何故・・・

あのようなことを

してしまったのか!?≫


毎日通る民家の前

華やかに咲き続ける向日葵

手を伸ばせば 届く距離にある


しかし自分の目で見て

楽しむ事は許される

美しき向日葵は

決して自分のモノではない!


最初は小さかった欲望が

次第に大きくなり

沢山実った向日葵の種が

欲しくて欲しくて抑えられない・・


わたしの感情は

掻き立てられていく


≪一粒くらい≫


しかしそれは

人のモノ・・

『盗み』

といえるのではないか・・


「罪」

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