3年F組クラス転移 帝国VS28人のユニークスキル。剣と魔法の世界に召喚された高校生はざまぁかましてエルフの廃墟でのんびりスローライフのつもりが人類の危機に立ち上がり団結チートで国を相手に無双する
第13-3話 喜多絵麻 「飲み込まれた花ちゃん」
第13-3話 喜多絵麻 「飲み込まれた花ちゃん」
ふいに、一人の男子が歩み出た。
「俺、いけるかも」
渡辺くんだ。映画マニアで幻影のスキルがある渡辺裕翔くん。
「菩提樹さん、俺って、幻影を出せるんです。俺に話しかけてみてくれませんか?」
「……やってみましょう」
「リアリティフレーム!」
渡辺くんが空中に手をかざした。映像は出てきていない。いや、何か白い霧が集まってきた。霧が女性の形になる。
「精霊のわらわを脅すとは」
霧の女性がしゃべった!
「知らねえっての。そっちが勝手にやるのが悪い。んで、用は?」
菩提樹さん、黙っちゃった。霧が揺れたのを見ると、怒ったのかもしれない。
「わらわに、寄生樹がついておる。それを取り除いて欲しい」
「なんで?」
「なぜと? わらわは太古の樹ぞ!」
霧でできた人影だけど、ぷるぷるしているのがわかる。
「そう言われても、おれはどっちの味方をするわけでもないし。どっちが悪者かもわかんないし」
「菩提樹は、その地に生命と魔力を与える者。寄生樹はそれを吸い取って生きているだけの者!」
「なるほど。んじゃ、お前を助けて、おれらは何か得がある?」
精霊さんが口を開けて固まった。言葉を失うって、こういうことね。
ここで意外な人物が歩み出た。
「わしらのような昔から住んどる者には、菩提樹さまは恵みの樹とされております。どうか助力を」
村長さんだ。
「この土地の者か。そう、わらわは恵みの樹と呼ばれておった」
「はい。まさか精霊さまのお姿を見ることができるとは……」
村長さんの話では、この辺りに昔はいっぱいの菩提樹があったらしい。でも木材として固くて使いやすいので、伐採されて今はほとんど見ないとか。
「お前、ちょっと、かわいそうなやつなんだな。ここも枯れ木ばっかでさみしいし」
「わらわが復活すれば、木々は蘇り作物は実るでしょう」
「それ別に得でも……あっ、じゃあ、おれらがここに住んでもいい?」
えっ? キングの唐突な提案に、女子の何人かと目が合った。
「昔はエルフ族が住んでおったが、今では誰もおらぬ。望むなら、この地に住むことを許しましょう」
「わかった。ちょっとみんなと相談するわ」
ぽかんと眺めていたみんなは、気を取り直し、相談することにした。
しかし精霊に対して物怖じしないキングくんて、やっぱりすごい。彼は「みんなを守る」というのが、ほんとに第一なのね。私だったら、精霊の雰囲気に押されて膝でもつきそう。
倒れた花ちゃんは意識を取り戻した。口寄せされてる間のことは、覚えてないみたい。花ちゃん、おしい!
キングとプリンス、それにヒメちゃんが中心となって、話がまとまる。
私に意外な役目がまわってきた。
「よし、菩提樹とやら、こっちで考えた作戦を言うぞ」
「なんでしょう?」
「その寄生樹ってところに、スキルで一瞬火を付け、すぐに掃除で消す。どうだ?」
私のスキルと友松あやちゃんのスキルだ。
「いいでしょう。最後に、さきほどの子の力を与えてもらえますか?」
「うん、花森? 癒やしのスキルか?」
「そうです」
「なんで、花森のスキルを知ってる?」
「その子の内部に触れましたので」
「なんか危ねえなぁ。もう勝手にするなよ」
「……はい」
菩提樹が怒られている。
私とあやちゃんで樹の前に立った。取り付いている木の顔の部分に狙いを定める。
「チャッカマン!」
「ケルファー!」
うまい具合に顔の部分だけがなくなった。ほかにも木の顔はいくつもある。順々にそれを消していく。
最後の顔を消すと、バラバラと音を立てて絡まっていた木が落ちた。
「ありがとう、人の子らよ。では、癒やしの力を」
花ちゃんが菩提樹に手を当てた。
「お注射!」
樹がバキバキ! と音を立てて、枝が元気よく伸びた。早送りをしているかのように、枝には新芽ができ、葉が育つ。
樹の幹がだんだん太くなり……
花ちゃんを飲み込んだ。
「花森!」
キングが拳を握った。
「待てキング!」
止めたのは山田のタクくんだ。
「カッパッパ!」
タクくんがざぶん! と樹の幹に沈んだ。
しばらくして、タクくんが花ちゃんを抱えて出てくる。
「おい、菩提樹!」
キングくんが精霊に向かって怒鳴った。
「申し訳ありません。あまりに巨大な力が流れ込み、調整ができませんでした」
鬼の形相で振り返るヒメちゃん。ゲスオくんがささっと逃げ出した。花ちゃんの癒やしにブーストかけてたみたい。
でも良かった、意識はあるようだ。目を見開いている。
「びっくりしたぁ! それに中は木くず臭くて!」
……花ちゃん、樹に食べられた感想がそれなんだ。
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