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都市戦カーラバルド杯。
それはバルドレイヤにて最も対人が強い冒険者を決める半年に一度のお祭りだ。俺たちが挑むのはLv199以下が参加条件のチャレンジカップ。また半年後にはLv制限なしのマスターカップが行われる。
つまりこのお祭りで戦う相手はみな二次転職を済ませた冒険者だということだ。Lv差を
「すごい人だかりね。お店の数もそうだけど本当にお祭りって感じだわ」
決闘場に向かう手前、立ち並ぶ屋台やら群衆やらを見てコトハが
「総勢256名の冒険者による勝ち抜けトーナメント、腕利きの
フィイが手元の資料を見て言った。
都市戦カーラバルド杯 チャレンジカップの手引き。街中で無料配布されていたそれには、本日の日程やトーナメント表、決闘ルール、入賞報酬などが記載されている。
なにせ256名なんていう超大規模トーナメントなものだから、日程は今日、明日、明後日と三日間かけて行われる。朝から晩まで決闘祭りだ。
「ルールは〝一本勝負、今のMAPを適用、消費アイテムの使用不可〟で先にHPが尽きた方の負けのシンプルな条件だ。決闘場ではデスペナルティが発生しない仕様になってるから負けた時のことは気にしなくていい。いつも通り強気でいけよ」
やや強張った顔のコトハに向けて言う。
「う、うん……大丈夫よ緊張なんてしてないんだから」
ぷるぷると体を震わせながら言われてもな。
「無理するなよ、まだ出番まで時間があるんだしさ」
そっとコトハの頭に手を添える。頭を撫でられて「ん……」とくすぐったそうに目を閉じるコトハ。体の震えが止まったあたり、多少は効果があったようだ。
「おにいちゃん、わたしも……わたしも!」
ぐいぐいとリズが俺の右腕を引っ張る。
「アルトくん、その、われも……」
ぎゅむと左腕を握ってきたのはフィイ。よせ、こんな公衆の面前で右に左にと迫ってくるんじゃない。またあらぬ噂を立てられるだろ。
「相変わらずのようだな、恩人。今日も美少女に囲まれて平和そうだ」
そんな時、聞き覚えのある声が俺を呼ぶ。最悪のタイミングで声を掛けてきたのは、長槍をメイン武器にしているランサーのウルク。早速あらぬ噂が立ってしまった。
「平和というより混沌だよ。やっていることは子守りに近い」
「またまた、そんなこと言っていいのかい。後ろで彼女たちがすごい顔してんぜ」
「まあ……いつものことだ。もう慣れた」
軽く聞き流していると左右から「おにいちゃん」やら「アルトくん」やら構って欲しそうな声が激化する一方だが、俺はもう知らん。知らんよ。そんなことよりも、
「それでここにいるということはウルクたちも都市戦に出るってことか」
「おうよ! なんせ半年に一度……いやビギナーカップは一年に一度しか行われねえお祭りだからな。いち冒険者たる俺たちもこれを逃す手はねえってわけさ!」
「なら今日はお互いライバルだな。――肝心のトーナメント表だが、俺はウルクたちと同じ島か。しかも割と近い、当たった時はお手柔らかに頼むよウルク」
「それはこっちのセリフだぜ。なんなら舐めプしてくれてもいい」
「はは、冗談を。フレンドにそんな真似はしない」
少し辺りを見渡してみると、ここで暮らしている内に見知った顔が多数見える。
格下狩りで有名なルドラや自称釣り名人のカムイ、またコロシアムで奮闘していたパーティーメンバーたちなどなど、彼らも都市戦に出場する選手のようだ。
中にはまったく知らない冒険者もいるが……おそらく
「――でもおにいちゃんならきっとかんたんに優勝しちゃうよ。だってこの都市でいちばんつよいルドラさんってひと、あっさり倒しちゃったんだもん」
ウルクたちと離れたところでリズが目を細めて言った。
「確かにあいつは戦績だけ見たら一流だ。だけどその実、自分よりも低レベルな冒険者を狩っていただけに過ぎない。
――それよりも注意すべきは他地域から来た冒険者だろう。名誉を求めて先の地域から来た者も参戦している。まだ同じ二次転職帯とは言え、装備とLvに大きな差がある。決して油断はできない」
トーナメント表には出場選手の名前・Lv・職業がセットで記載されているが、大半がLv180オーバーの猛者揃い。しかもそのほとんどは俺たちのように高速レベリングをしてきた者ではなく、じっくりとクエストをこなしてきた者だろう。その分、装備はあちらの方が整っているはず。
装備もまた対人において勝敗を決める重要な要因のひとつ。この大会、思ったほど楽にはいかないだろうな。
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