114
「ちょっと待ってくれ、今の話は本当なのか!? モンスターが攻め込んできた時、一帯にキルゾーンが適用されるって……それじゃあ都市の人たちも死ぬ対象に含まれるのか?」
俺の問いにメルクトリが
「その認識で間違いない。だからこそ我らはこれだけ広大な監視場を築き上げているのだ。時にはモンスターどもとの血なまぐさい殺し合いが始まるのだからな。たとえ何百、何千が攻め込んでこようとも、
これは何ということだ。メルクトリまでもそう言うということは、最悪の場合は本当に死者が出るのだろう。以前カーラが犠牲者という単語を出していたことにも頷ける。
幸い以前は快勝してくれたらしく、被害者はゼロだと言っていたが……油断できないな。
「いつまでも防衛
メルクトリが腰から剣を抜き、その切っ先を天へと突きつける。彼はいかにもな熱き騎士団長さまといった感じだ。
「ならん。元よりこれは誇りの問題ではないのだ。王が誰も通すなと言った以上、我らはそれに従うのみ。論ずるまでもないことだ」
対してパーシヴァルは
「そんな
「馬鹿を言え。
「ははっ、これは面白い。鞘とは剣を収めるだけの
「そうであればよいのだが、どうしようもないなまくら刀の尻ぬぐいを収めるのが我ら鞘の役目だ。剣を自称するガラクタは、放っておくと何をしでかすか分からんからな」
メルクトリとパーシヴァルがああでもないこうでもないと
「アルトくん。バルドレイヤには騎士団が二つあり、騎士団長もまたそれぞれに一人ずついるという認識でよいのだろうか」
「ああ、それで合ってるよ。北部の監視場を務めるパーシヴァルたちが〝王の鞘〟南部を務めるのが〝王の剣〟と所属がそれぞれ分かれている。
以前の襲撃では犠牲者ゼロでモンスターたちを返り討ちにしたらしい。どちらも
だいの大人二人がいつまでも口論しているというのは、見ていて何とも言えない気持ちになる。
彼らはどちらの騎士団が優れているかを言い争い、もはや俺たちのことなど眼中にないようだった。……これなら今のうちに行けそうだな。
「フィイ、こっちだ」
忍び足でこっそりとその場を離れる。
封鎖区域へと向かう俺たちにパーシヴァルは気づいていない。メルクトリは……
「あのおっさん、もしかしてこのために」
ちらりと視線が合ったメルクトリは、わずかに口角を緩めていた。
なるほどあれはパーシヴァルを引き付けるための演技だったらしい。暑苦しい見た目の割に意外と切れ者だな。
〝これより先はキルゾーンが適用されます。HPが0になった瞬間、世界から消滅します。本当に侵入しますか〟
封鎖区域へと立ち居る直前、警告画面が現れた。これで彼らの主張が事実だったことが分かる。あとはこの危険地帯に入るかどうかだが。
「われのことは心配しないでくれたまえ、覚悟ならできている。都市の人たちの安全を確保するためには先手を打っておくことに越したことはない。それになにより……われはアルトくんを信じている。きっとモンスターたちを倒してくれると」
フィイは揺るぎない瞳でそう言った。
そこまで言われちゃあ男として引くわけにはいかない。何より俺は元カンスト勢だ。
いくら最悪の場合死ぬという条件があっても、この程度のMOBにビビるような腕前じゃない。とっとと片付けて都市戦に臨んでやる。
「行くぞフィイ!」
警告画面のYesにタッチ。俺たちは封鎖区域へと踏み入った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます