103
「――お待たせいたしました、こちらが現在、空いているギルドハウス一覧になります」
「お、どれどれ、手頃なギルドハウスは……ってマジかよ」
受付嬢が持ってきた書類に目を通す。するとそこには、
■ギルドハウス一覧
オークション広場から徒歩三分、七階建てで設備も充実★ [7Gルクス]
武器商店、酒屋、バフ屋などなど、アクセスがいい好立地のお屋敷! [5Gルクス]
熟練冒険者にオススメ、訓練場付きの一軒です♪ [2Gルクス]
Etc……
「いやたけえよ」
あまりの高額物件の数々におもわず
「すみません、お安い物件はもう売り切れておりまして……残っているのがこちらですべてなんです」
申し訳なさそうに受付嬢が言う。
ゲーム通りならギルド開設費用は100mていどで済むのだが、いかんせん土地代やら人件費やら、いらんリアル設定が適用されて豪邸だとこのような価格になっているようだ。
しかしあぐねいていても無いものは無い。嫌でもこの中から選ばねばならんのだ。放っておくと更に高額物件だけ残る可能性もあるし。
「最安値で2Gか……(コトハの手は借りないとして)出せる金額は1.5Gが限界。あと500m足りないというのは深刻だな……五億稼ごうと思ったら
「なら足りない分は俺が出してやるよ。――ほら500mな」
「……お前は」
とつぜん現れて500m入り小袋をポンと出した男には、どこか見覚えがある。
プロフを確認すると……男はウルクという名前なのか。……ウルク? それって確か。
「あんたが超大物の新人冒険者、アルトで間違いないな。これは
「やっぱりお前、あの時の!」
男がにこりと微笑んだところで確信する。
彼はかつてルドラから装備をぶんどられた冒険者だ。結局、そのあと俺が取り返してあげたことで今も冒険者業を続けられているらしいが、まさか巡り巡ってこんなところで再会するとは。
プレイヤー間での恩返しって何だか懐かしい感じがしていいな。
「それじゃあありがたく
「気にするなよ恩人。
「お前いったいなにを――」
言いさしたところで、ふと上級コロシアムを制覇した初日のことを思い出す。
コロシアムでは、挑む冒険者パーティーが何ウェーブまで突破できるかを賭けることができる。当時Lv100だった俺たちを最後まで突破できると信じていた者は限られており、わずか三名という有様だった。そしてそんなものだから、倍率はなんと脅威の400倍。
三名の誰かさんは俺たちのコロシアム制覇を見通して、大金を勝ち取ったのだとか。
つまりその誰かさんというのは。
「そうか……あの時、二十ウェーブ突破に賭けていたのはウルクたちだったんだな。そりゃあ金を持ってるわけだ」
「ご名答! てなもんだからどうか気にせず受け取ってくれ。あれがなかったらきっと俺たちは今頃、冒険者を諦めていた。それだけじゃなくあんたらの力を知っていたからこそ大儲けすることもできたんだ、さすがに知らん振りをするというわけにはいかんよ」
「そうか……だけどありがとうなウルク。おかげで助かった」
「こちらこそ、困ったときはお互いさまだ!」
ウルクの出資があって、俺たちはなんとか2Gもするギルドハウスの購入に至る。
正直なところ、ギルドハウスは普通の一軒家とかでよかったのだが無駄に二十億もしたので、訓練場だとか温泉だとかいろいろ付いてる豪邸になってしまった。
四人パーティーで暮らすにはオーバースペック過ぎる。……まあいいか、ようやく宿屋暮らしを卒業できたわけだし。
そんなこんなで、俺たちはバルドレイヤの都市内に
心機一転、これからはこの
「おいお前ら、そこで何をしている?」
ギルドハウスに入り、各自、私物を整理しようと言った矢先、なぜかコトハフィイリズの三人は俺の後ろについてきてそのまま全員、同じ部屋で荷を降ろしはじめた。
ここは俺の個室なんだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます