079


 戦闘は予想通りの運びとなった。


 エナジー、ブレス、ウォークライ、激震、等価交換、さらにはほくほくたこ焼きによるステータス上昇効果によって、100Lvでありながら魔力は圧巻の800オーバー。


 盛りに盛ったバフと、フィイのエンチャントのおかげで、なまじ化け物じみた火力を叩き出すことが可能だ。とは言え相手もまたLv170の化け物。これだけでワンパンできるほど生易しい敵ではない。


「なによこいつら……やけに堅いわね」


 二刀で乱舞しつつコトハは文句を垂れた。


「そりゃあ全体で中の上にはあたるモンスターたちだ。雑魚とはいえHPは20,000越え、防御力も魔法抵抗力も設定されてる。積んだダメージがそのまま通るような敵じゃない」


「とか言いながら、スキルひとつで瀕死にしてくれてるじゃない。さすがはアルトね、このままなら難なく倒しきれそうだわ」


 鍛え上げられた立ち回りを生かして、コトハはモンスターたちを処理していく。KBを利用し、ターゲットを取りながら安全にカイトしている。かなりプレイングが上手くなってきたな。


 コトハの言う通り、今はとくに問題のある状況ではない。


 俺がシューティングスターを撃つだけでバンダスナッチの体力は大きく削られるし、後は彼女が通常攻撃なりスキルなりをかませば、殲滅せんめつすることができるのだ。


 肝心の問題は……


「より強力なモンスターが出てくる、十、十五ウェーブからだな」


 コロシアムの嫌らしいところは、大量のモンスターが出てくるだけじゃない、段階刻みでより凶悪なモンスターが投入されるところだ。


 たとえばバンダスナッチみたいなモンスターは、耐久度こそ高くなっているが、所詮は噛みつき攻撃しかしてこない雑魚モンスターだ。


 しかし十ウェーブ目に入ると、スキルを使ってくるモンスターが投入される。火炎なり電気なりが当たり前に飛んでくるわけだ。スキルによる攻撃はダメージがもちろん高い。気を抜いた瞬間、一コンマ秒後は床ペロ行きだろう。


「これで――終わりよ!」


 コトハが最後の一匹をスキル〝横一文字〟にて撃破する。


「――第一ウェーブを突破しました、続けて第二ウェーブへと入ります!」


 同時に上方より響くアナウンスと、大衆のどよめき声。


 観客たちは俺たちがバンダスナッチを倒しきれるとは思ってもいなかったのだろう。


 実際、パネルに表示された〝アルトパーティーのウェーブ突破予想〟は第一、第二ウェーブに集中している。その影響で賭けの倍率が凄まじく低下していた。


 最後の二十ウェーブまで突破は……400倍か。たった三人だけ俺たちを応援してくれている者がいるらしい。いったい誰だろうか。


「アルト、次が来るわよ!」


 そんなことを考えている内に、次のウェーブがやってきてしまった。


 同じ手順を踏まえれば、十ウェーブまでは安泰あんたいだろが……まだまだ先は長いな。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る