057
あれから三日経った。
インスタンスダンジョン〝ヴァーリルの谷底〟を毎日周回した結果、俺たちのLvは全員100に到達。二次転職が可能なLvになった。これでようやく谷底とはおさらばできる。
Lvが高くなるとその分、次に必要な経験値量も多くなるから、適正Lvとなった谷底はもうあまり美味しくない。さっさと移動しよう。
「これで全員、二次転職が可能になったな。次の地域に向かいたいんだけど、二人とも異論はないか?」
「異論はないんだけど、次はどこに向かうつもりなの?」
コトハが言った。
「目的地は〝闘争都市バルドレイヤ〟っていう決闘が盛んな所だ。そこにあるインスタンスダンジョン〝コロシアム〟はかなり経験値が美味いから、通えば一気にLvが上がるだろうな」
「かなり物騒な名前ね……わたし決闘はしたくないわよ」
コトハは顔をひきつらせた。もしも一対一での果たし合いが始まれば自分はどうなってしまうのか、その自覚はあるんだろう。コトハ、喧嘩とか強そうには見えないしな。
「バルドレイヤ……そこはかなり有名な都市ではなかったか。国王が弱者を好まないゆえに、外からくる弱い冒険者をすべて跳ねのけてしまうのだとか」
フィイが都市の
「えっと、もしかしてそこってかなりヤバイところなんじゃない? ねえアルト、わたしは、わたしは大丈夫なの? 入国不可とか言われちゃわない?」
「大丈夫だからそんな顔をするなって。一応フラグが立ってるはずだから、俺たちはすんなり入れるはずだ」
「フラグって?」
コトハは初見だから、あの場所の性質を知らないのだろう。
バルドレイヤを通るために必ず経由しなくてはならないエリア〝メルクトリの監視場〟は、Lv100以上の者でなければ踏み入れることができない。あそこは国王の領地で、そこでよそ者を招き入れるかどうかをふるいにかけているからな。
可能であれば谷底も無視して、一気にバルドレイヤに行きたかったんだけど、このレベリングはそのための
「そんなに心配いらないよ。あいつらは強弱の判断基準をLvに置いてるからな。100Lvになった俺たちなら入れてもらえるはずだ」
「そうなの? ならよかったけど……アルトは本当に何でも知っているのね」
「ああ、俺はこの世界のことならなんでも知っている……はずではあるんだがな」
ふと、これまでの過程を振り返る。
モンスターの種類やダメージ計算式、果てにはMAPや地形までもが、この世界はADRICAとまったく同じだ。しかしコトハや謎の声などいくつか異なる点が生じているのはなんなのだろうか。
ううむ、まだまだ情報が不足していてまったく分からん。
「ところでアルト、ステータスはどんな感じにしたらいい? 振ってない分は、ぜんぶ体力に振ろうと思うんだけど……」
「その認識で構わない。次のIDはかなりの格上狩りになるからな。最大まで耐久力を高めておかないとここで詰む。貯まったポイント分で、HPを十分に補えるはずだ」
「それなら良かったわ。まだ何とかなる範囲で」
コトハはステータス画面を開いて、そそくさとステ振りを行っていく。
初めこそ地雷感満載の彼女だったが、ようやくいっぱしの冒険者っぽくなってきた。
谷底で約20Lvも上がったことだし、たくさん貯まったポイントを体力に振れば、地雷はもう卒業だ。
「これで全員振り終わったな。俺たちのステータスはこんなところか」
■ステータス
アルト:体力20、筋力20、魔力25、知力20、幸運20
コトハ:体力30、筋力72、魔力1、知力1、幸運1
フィイ:体力40、筋力1、魔力40、知力23、幸運1
「HPだけでみたらフィイが4,000で一番ね。アルトは2,000しかないけど、どうせまた何か企んでいるんでしょ」
コトハがしげしげと俺を見つめながら言った。
「察しの通り、二次転職で隠しジョブを開放するための必要条件だ。そのためにまたステータスを均等に分配しているわけだが、問題ない。俺のHPが低いのはいつも通りだ」
「アルトくんは自ら好んで瀕死になる男だからな。もはやHPは必要ないかもしれない」
フィイの意見にコトハが頷いて賛同する。
さすがにそれは酷い
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