021
「――
コトハはくるりと辺りを見渡す。周りにはすき間を埋め尽くさんばかりの冒険者が、更に上階には多くの修道女の姿、その上にもまた冒険者と思しき
確かに一般的な聖堂とはかけ離れた雰囲気かもしれない。
「ノルナリヤの聖堂はかなり特殊で、ギルドと酒場と
「何よそれ。聖堂ってことは賢者さまを
ぐうの音もでない正論である。
「さあな。その辺のことは詳しくないけど、どうなんだろうか」
「分かったわ、きっと女神様がそうしろって言ったに違いない。だってもしわたしが神様だったら、安らかに
実にコトハらしい
「きっとここの女神様もうるさ――陽気な人柄だったのかもしれないな」
「ちょっといま女神様『も』って言った? ねえわたしのことうるさいって言った?」
「それで転職は二階だからこっちから階段を上がって――」
「あー! 誤魔化してる! アルトが悪口言ったの誤魔化してる!」
もう……うるせえよ……。
「――あーあー、待ちたまえきみたち、待ちたまえよ」
いざ二階へと上がろうとした寸前で、のんびりと間延びした、それでいてよく通る幼い声が背後から鳴る。ローブに身を包んだ金髪の少女が、ジト目で俺たちを見つめていた。
「ここから先はギルドに登録された冒険者のみが入れる。いわゆる登録制というやつだ。見たところきみたちは、この街の冒険者ではないのだろう。そこでわれが呼び止めたというわけさ。ふふん、どうかね、有能な働きぶりだろう」
「……えっと君は?」
「われの名前はフィアトル、呼称はフィイと呼ばれている。どちらでも呼びやすい方で読んでくれてかまわんよ」
非常に個性的な一人称を口にする彼女は、
しかしただのロリっ
「俺はアルトでこっちはコトハ。よろしくなフィイ」
「ああよろしく頼むよ少年」
手を差し出すとフィアトルに優しく握り返される。よそ者を好まない性格だったらどうしようかと思っていたけど、良かった。この分だと敵意はなさそう――。
「って、なあ、おい?」
握手を終えた直後に、フィイはなんのためらいもなく俺を抱きしめてきた。圧倒的な弾力感が伝わってくる。――間違いなく、こいつは
よく分からないけど心の中でお礼していこう――ありがとうございます!
「握手を交わすのもいいが、こちらの地域ではこのように挨拶するのが一般的でね。シスターの
フィイは目をつむりながら抱擁を続けていく。
驚くなとは言われたものの、俺は邪念が浮かばぬようひたすら素数を数えるのに必死だった。
この
いやはや素晴らしい信仰だ。俺も秩序の女神さまに入信したい。
「――ところでどうしてわれは
隣でぐぬぬと
「……何やってんだおまえ」
「別に。何もないわよ」
「初対面の人その態度は失礼だぞ。あんまり
「してないわよ……まったく本当にアルトは!」
どうして俺が怒鳴られなくてはいけないのか。コトハはたまに
「ギルドの登録はまだなのだろう。われが案内するからついてくるがよい」
「それは助かる。ありがとうなフィイ」
「礼はいらんよ。迷える者を導くのはシスターとして当然の役目さ」
フィイは俺の手を引き、受付に向かって進んでいく。
「……あのーコトハさん。痛いんですけど」
間髪入れずに、反対の手を取って来たコトハは目も合わせてくれず、そのくせ何故か
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