019
「スキル〝メテオウェーブ〟硬直時間500ms、発生速度200ms、
特大剣の切っ先から放たれた衝撃波の詳細に触れながら、ダグニアの攻撃を回避する。
「な、なに、まさかスキルの特性を全て――いいやそんなの嘘っぱちだ!」
ダグニアは両手で特大剣を大きく振りかぶる。それだけで次のスキルも
「スキル〝ストライク〟硬直時間2s、発生速度500ms、
「てめえ、そんな馬鹿な――」
モーションが大きく攻撃範囲が狭いスキルなんて避けてくださいと言っているようなものだ。たった一歩だけ横に逸れて、すれ違いざまに固めた
「がっ……」
100ダメージと出た数値の直後、ダグニアは地面にくずおれた。まだまだHPが残っているのに、根性の無いやつだ。
「何だ、いまあいつ何をしたんだ!?」
「分からねえ、気づいたらカウンターを入れていたが、俺たちの知らないスキルなのか?」
どよめく大衆は
「違う、いまのは〝通常攻撃〟だ」
『つ――通常攻撃!!?』
そんなことはあり得ないと、混乱の渦はさらに広がり、やがて周りは俺をチート扱いするようになった。理解できないものをすぐにチート扱いするのはMMO民の悪い癖だな。
「馬鹿が、舐めやがって畜生!」
俺が〝舐めプ〟していることに気づいたダグニアは、よりいっそう凄みの帯びた
だが繰り出す攻撃はことごとく
「お、俺の負けだ、生意気言ってすまねえ……ゆ、許してくれ……」
ダグニアの敗北宣言の後、辺り一帯はとめどない
さっきまで俺に敵意を向けていた奴らも、今じゃ驚きと
「な、なあ坊主、どうしてお前はそこまで強くなれたんだ? その秘密をどうか俺に教えてくれ」
懇願するようにダグニアが言った。
もう敵意や悪意も感じ取れないし、まともに対応してみるか。
「俺が強いのは、途方もない努力の積み重ねだよ。別に特殊な才能があるわけじゃない、ただ全ての職業の全てのスキルを把握してるだけだ。
頑張ればいつかお前も俺みたいになれる。だからさ、もうやめろよ。街に来たばかりの冒険者をいびるより、お前にはやるべきことがあるはずだ」
「……ああ、まったくもってその通りだ。クエストを失敗する前、まっとうに努力してた時期が俺にもある。その頃から少し前が見えなくなっちまってたのかもな。すまねえ坊主、これからは真面目にやってみるよ」
「よし、その意気だ! 頑張れよダグニア!」
一時期はどうなることかと思いきや、無事に握手も交わして、俺たちは平和的な終わりを迎えた。
改心してくれたみたいだしこれで一件落着だな。もう新人冒険者をいじめることはないだろう。
そう言えば武器を奢ってもらう約束があったけど……いいや。こんなところでもらった武器なんてどうせ使わないし、深く反省もしてるしな。
「嬢ちゃんもすまねえな、突然煽り散らかしたりしてよ」
「いいの、わたしも散々言っちゃったしお互い様だわ」
二人もなかなかにいい雰囲気だ。やっぱり同じ冒険者仲間としてこうじゃなきゃな。敵対関係は何も生まない。
「ところで話は変わるが、坊主と嬢ちゃんは付き合ってんのか。見た限りずっと一緒にいるようだが」
「ちょ――ええ、はあ!? な、何を言っちゃってるのよあんたは!」
「てっきりそう思っていたんだが違うのか?」
「そんなわけないじゃない! し、知り合ってまだ間もないのよ、なのに付き合うだなんて、いくら何でも気が早すぎるっていうか――ねえあなたはどう思うのよアルト」
どうして俺が面と向かって睨まれているのか
「どうってそんなこと俺に聞かれても困る」
「た……確かにそうかもしれないわね。……いいわ、用事が済んだのなら早く行きましょ。魔王を倒すためにも次の街を目指さなきゃ」
言うが早いか、コトハは俺の手を引いてアウラの外へと進んでいく。それを見て「大変そうだな」と笑うダグニア。確かに彼女の面倒を見るのは大変そうだ。目を離すと何をしでかすか分かったもんじゃない。
「まあなるようになるか」
秩序の街ノルナリヤを目指して、新しい一歩を踏み出した。
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