第3話

 存在しない人間について、いくつか調べた。


 管区内には当該者のリストがあって、その中の誰とも顔は一致しなかった。

 リストにあったゲーム配信者に連絡を取って訊いてみたが、答えは変わらなかった。そして、一言だけ言われた。


「見えていないなら、見てあげてください。救ってあげてください」


 そう言われた。なんのことだか、分からなかった。


 リストにあった特殊な薬品を作る会社にも問い合わせた。


『LWH、LWF両薬品ともに管区さんにリストを挙げているかたにしかお売りしていませんね』


「そうですか」


 この会社は、人の認識に関する薬剤をいくつか売っている。そのなかに、人を見つけやすくしたり見つけにくくしたりする薬があった。リストのなかに、あの女はいない。


『もし、リストにないかたがいらっしゃったら、見つけてあげてください。そういうかたを、救ってあげてください』


 また、言われた。


 救う。何を救うのだろうか。

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