第43話 カンダカラノオロチ
ウルティと互いに少し距離を開けて立ち、モンスター達がぶつかりあえるだけのスペースを作って俺達は対峙する。
あれっ、そういえばクロンはまだカードに変身できないかもだし、俺のデッキは28枚しかないぞ。ここに来て相手の不戦勝で監獄送りになるとかは嫌だ!
「ご主人様ご主人様! これを!」
「クロン、これって……もしかしてカードのパック?」
「さっきキャンペーンで貰ったんです。びりっと開けちゃってください! 5枚くらいは入っています!」
不意にクロンから手渡されたのは、カードが複数枚入っているであろう小さな紙袋だ。これなら30枚のデッキにはなるし、デッキが少し強化されるかもしれない!
そしてこれを渡してきたということは、やっぱりまだクロンは怖くて変身ができないのか。
「でかしたクロン! よし――」
「アンタ達! 何をぼさっとしているのよ、さっさと始めなさいよ! ほら十、九、八」
「えっ? いやちょっと待って!」
「待たないわよ! 七! 六!」
デッキ強化なんてさせまいというのか、意図してのことなのかはわからないけど、唐突にプロメのカウントダウンが始まる。急いで俺はパックを開け、出てきた5枚のカードの効果を――
いや、読む暇なんてない! なんか強そうな名前の2枚をデッキに入れて左腕の
いいのかこれで!? 効果をほとんど確認しないままデッキが完成してしまったぞ!?
「ふん! まぁ汚らしい人間の犯罪者のデッキなんて、弱っちいものだとは思うけど。一応注意しなさいよ、ウルティ! やると言ったからにはきちんと決めなさい!」
「りょうかい、ぷろめ。ほんきでいく」
右手でサムズアップを決めてみせるウルティ。なんかやっぱり幼女とは思えぬほどの貫録を見せるなこの子は……。
年の差がありそうな俺に対して強気で来るのだから、カードのモンスターとして扱われていそうな竜族であったとしても、自分の実力に自信があるのだろう。
幼女であっても油断は禁物だ。カードゲームって強さに年齢は関係ないからな。
「じゃあ、いく。かまえて」
「言っておくけど、俺が勝ったらここは見逃してもらうだけで、君を連れて行きはしないからな! 危ないことになりそうだし!」
「「
手札の4枚を見て――よし! 悪くはない!
「俺は
俺の目の前に姿を現したのは、右腕自体がスナイパーライフルのような長銃となっている黒色の戦士だ。こちらには背を向けているけど、カードのイラストでは頭部がスコープのようになっていて、無骨な印象を受ける。
右腕のあんな口径のライフルになんて絶対に撃たれたくないな。相手が使わない限り対峙することは無いのだろうけど、銃口を向けられたくもない。
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――――――――――――――――――――
「アイアン・ガンナーの効果発動! 1ターンに1度だけ、手札の
先制ダメージは貰った! ロック・ジャイアントには墓地から手札に戻る効果があるし、軽いコストで相手に優位をとることができる!
しかし、ウルティはぼんやりとアイアン・ガンナーの銃口を見ているだけだ。どうにも危なっかしい。
アイアン・ガンナー、どうにか足元とか撃って痛くないようにしてやってくれ!
「やったぁ! ご主人様の先制攻撃です! 攻撃できない1ターン目にダメージを与えるなんて、さすがです!」
「ウルティ! ぼーっとしないの!」
「……うん。私は手札の、
な、なんか雰囲気がほんわかしたものから真剣になった!? それに効果ダメージが跳ね返ってくるって……
「
手札を捨てた後、可愛く微笑んで右手でピースするウルティ。ほんとうになんだあの子、可愛い。
……じゃなくて! アイアン・ガンナーの姿がウルティの前に現れた鏡の前に映し出される。その表面からまるでホラー映画に出てくる呪いの女のように、もう一体のアイアン・ガンナーが上半身だけをぬっと出してくる。
そして、右手の大口径の銃口を俺に向けてきた。くそっ! さっきの向けられたくないとか思ってしまったのはフラグだったか!
そして、そのまま銃口の奥が一瞬光り、俺の腹部に放たれた弾丸が突き刺さった。
「ぐうっ!」
反応が遅れたかのようにじわじわと痛みがやってくる。傷はついていないし、皮膚も貫通していないけど、少々の痛みは感じる。ゴム弾やBB弾で撃たれた時ってこんなものなんだろうか。
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朝陽
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「だけど、効果ダメージを受けたことでソニックスキル、ブラスト・ドローを発動できる! 自分はもう1ポイントの効果ダメージを受けることで、2枚ドローすることができる!」
ダメージは与えられなかったけど、そのコスト分のカードは引く! まだ焦るほどのダメージではないし、これでコスト分を回復すれば実質手札の消費は無しだ。
「うーん、だめだよ? 手札から
「なっ!? また手札から!?」
俺の手札は無効になったブラスト・ドローを消費したことで、残り1枚。
対してウルティは消費分を回復したことで手札が3枚だし、次のターンで手札は4枚だ。完全にカードの枚数で逆転されてしまった。
ここまで2連続でこちらの動きを封じる手札からの効果。もしかしてウルティのデッキは、
そうだとすると、なんて上級者向けのものを扱っているんだあの子は!
「俺は、カードを1枚セットしてターンエンド」
――――――――――――――――――――
朝陽
●モンスター
●スキル
伏せ1枚
ウルティ
●モンスター
なし
●スキル
なし
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俺の予想が正しければ、ウルティのデッキは
よく考えて勝負に挑まないと、この勝負はどんどんウルティが有利になっていってしまう!
……既に、俺の手札は0枚なんだけどね、うん。どうしよう。
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