第6話 異世界バトルフェイズ!
「馬鹿が。さっきまで枚数が足りなかったようなデッキで勝てるわけがないだろ!」
巨漢がこちらを威嚇するように構え、体中の筋肉をぴくぴくと動かす。
カードゲームに筋肉なんてほとんど必要ないが、体格の差があることに加えて威圧感が凄まじい。
いや、本当になんでカードゲームの世界なのに、あんなにマッチョなんだ……?
だけど、その重圧に負けてられなんかいられない。
クロンが自分に命運をかけてくれたのだ。必ず勝たなければならないと、しっかり足に力を入れる。
「いくぞ!」
「おう! 来いやぁ!」
「
お互いに声を張り、開戦の合図を言い放つ。
いよいよ異世界転生後初のカードゲームの始まりだ。
互いにデッキから4枚のカードを引いて手札とする。
と、ここで、先に巨漢が動いたことから先行は相手側として決まったらしい。勝手に決めていないだろうな?
だけど相手が先行なのは好都合だ。なぜなら俺の世界とルールが変わっていないことを確認できるから。
俺は巨漢のプレイを見て、違う世界でもスマホのゲーム通りに進むことを確認する。
ゲーム開始時に4枚を手札とし、先行はドローをすることが、つまりカードを引くことができない。ここまではスマホゲームであるブレイクコードと完全に一緒か。
「俺のターン! さて、どうするか……」
巨漢が悩んでいる間に、俺は巨漢との間で地面すれすれに現れた線を確認した。
凸型で計4マスから構成されたフィールドが俺の眼下と、巨漢の眼下に描かれている。
だったら、前方の1マスはモンスターが現れるゾーン、後方の3マスはモンスター以外のカードを置くスキルゾーンだな。
だから、互いのフィールドに現れるモンスターは1体のみ。
そのモンスターをカードのスキルでサポートし、6ポイントある相手のライフを削るのだ。それがブレイクコードのルール。
「そうだな、俺はモンスターゾーンにガーゴイルの監視者を召喚!」
――――――――――――――――――――
ガーゴイルの監視者
――――――――――――――――――――
1ターンに1度のモンスター召喚権を行使。男の目の前に現れる、四角い台座に乗った細い体の悪魔の石像。RPGでよく目にするガーゴイルのように、あれは動くことができる石像というものだろう。
目の前に実体化したモンスターに感動――している場合じゃないな!
実際に大好きなカードゲームのモンスターが目の前に現れると興奮するけど、相手のフィールドと手札をよく見て戦略を考えなきゃならない。
そして戦闘のルールは実際にやってみて確認だ!
「俺はこれでターンエンドだ!」
「スキルを場に伏せることなくターンエンドか……」
――――――――――――――――――――
巨漢
●モンスター
ガーゴイルの監視者
●スキル
無し
――――――――――――――――――――
先行1ターン目では攻撃できないので、相手はモンスターを召喚してすぐにターンエンドした。
しかし、3か所あるスキルのゾーンにカードを伏せないというのは怪しい。普通にスキルを使うこともしなかった。
プレイヤーはモンスターをサポートするスキルを場に伏せて、相手ターンに使うことが可能だ。
伏せないということは相手の手札はモンスターだらけ? それともこちらを誘い込む作戦?
だけどガーゴイルの監視者以外のカードはわからない今では、考えても無駄だ。
「だったら、俺のターン、ドロー!」
やはり苛立ちの感情はあってもテンションは上がっているのか、俺は勢いよくカードを引く。これで俺の手札は5枚だ。
早速手札にクロンがいるけど……残念ながら今出しても勝てるカードではない。でも、彼女が必要となる時は来ると思う。
「俺は
『ウオォ!』
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
ガーゴイルの監視者の前に立ちはだかったのは、両手に長剣を持ち、全身が燃え上がっている炎の戦士。
赤く輝く大きなルビーが
モンスター同士の戦いで比較する
相手の場には伏せカードが無いので、確実にガーゴイルの監視者を倒すことができる。
「ドローの後は、何もしないスタンバイフェイズが来て、次にモンスターを召喚するメインフェイズ。さらに攻撃を行うバトルフェイズ……」
呟きながら、この世界でもルールが変わっていないことを確かめる。
相手が俺の行動に何も言ってこないということは、俺の知っているルールと同じだということの証明だ。
「よし、バトルフェイズだ! フレイム・ソードマンでガーゴイルの監視者を攻撃!」
俺の命令を受けたフレイム・ソードマンが両手の長剣を振りかぶり、その刀身に炎を宿す。
そのまま目の前の凍り付いたように動かないガーゴイルを真正面から斬りつけて、三枚おろしにした。
よし! フィールドに出るモンスター1体同士で勝負、そして
「ふんっ、必要経費だ」
――――――――――――――――――――
巨漢
――――――――――――――――――――
相手のモンスターと戦闘すると、お互いのモンスターの
今のは1対1だったから、差分の0+1で1ダメージ。
ついでに、戦闘で負けたモンスターは破壊され、場から墓地へ送られる。
さらにダメージが起こった時、プレイヤーへエネルギー波による衝撃が走るようである。
……
そんなことより、記憶が正しいならガーゴイルの監視者は戦闘で破壊された時に、同名の仲間をデッキから手札に加えることができるはず。
「俺はガーゴイルの監視者の効果を発動するぞ! デッキから同名カードを手札に加える!」
記憶に違いはなかった。もう一体のガーゴイルの監視者が手札に加わったことは気がかりだけど、次の相手ターンを怖がっていたら勝負は続かない。
「バトルフェイズの後は、自由に行動できるメインフェイズ2。よし、スマホゲームと同じルールだ!」
最後に、残り4枚の手札の内2枚を右手に持ち、浮いているテーブルに1枚ずつ裏側で置いた。
「俺はスキルを2枚セットして、ターンエンド!」
これがスキルを場に伏せるという行為だ。これによってこの2枚は相手ターン中に使えるはずだ。
相手の攻撃を防げるカードではないけど、必ず役立ってくれるだろう。
――――――――――――――――――――
朝陽
●モンスター
●スキル
伏せ2枚
巨漢
●モンスター
なし
●スキル
なし
――――――――――――――――――――
一応勝負は俺が有利で始まったと言ってもいい。
しかし、あの男の余裕は何だ? 手札に強力なカードを隠し持っているのか?
答えを見せてやるというように、巨漢がカードをドローした瞬間、その顔に嗜虐的な笑みが浮かんだ。
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