(ポンコツ)変身ドラゴン少女とのカードバトル戦記 ~カードになれる少女とドローで全てを救う!~
フォトンうさぎ
第1章:ポンコツドラゴンは救いたい!
第1話 人生ターンエンド。よろしくお願いします緑の少女。
「ターンを終了したのがさっきで、なぜか森の中で次のターンが始まると」
よし、落ち着いて状況を整理しよう。一人であれこれ考えるのは得意なんだ、うん。
俺は道を歩いている女の子を助けた代わりに車にひかれた。
当然気絶したか、考えたくはないけど死ぬ直前で走馬灯を見ているか。あるいは、既に死んで天国にいるかだ。
だけど確かに意識はあるし、頬をつねってみても痛みはある。気絶中の夢や走馬灯じゃないようだ。車に跳ね飛ばされる直前に背負っていたリュックもある。
しかし夢じゃないのなら、どうして俺はこんな森の中にいるんだ?
ふと気がついたらここに立っていて、足元にはほのかに湿った土と雑草の集まり。俺の腰くらいまで背丈のある草が集まっている箇所もある。
周囲には背の高い木がいくつも生えていて、まるであの現場から瞬間移動したみたいだ。一切の痛みも衝撃もなく、一瞬で。
「スマホがないから位置情報わかんないし」
どこかで落としたのか、それとも車にひかれた時にはじき飛ばされたのか、ポケットにスマートフォンは入っていなかった。
おかげで救助隊にも大学の仲間にも連絡が取れない。こんな森の中に1人でいると気がおかしくなりそうだ。
「で、代わりにあるのが左腕についている機械。なんだこれ?」
マジックテープがついたバンドで左腕に固定された、楕円型で緑色の機械。おまけに腰の右側には、いつの間にかベルトに固定された握りこぶしほどの大きさの黒いケース。
なんかこれらのデザインをどこかで見たことあるような、ないような?
試しに留め金を外して黒いケースの中身を取り出してみれば、約30枚のカードの束が現れた。つまり、カードゲームでいうところのデッキであった。
「ちょっと待て、デザインを見て思い出してきたぞ? これブレイクコードのカードか? それに左腕のはモンスターを実体化させる機械か! 名前、なんだっけ……」
ブレイクコード。それは30枚のカードによるデッキと4マスのゾーン、それと6つのライフを所持して相手のライフを削るスマホのカードゲームアプリだ。
ゲームの中では確か、俺の左腕についているような機械を使って、カードに描かれた事象やモンスターを実体化させるんだったか。
「いや、待て。ブレイクコードは人気だけど、カードの商品化はされてないだろ。それに俺、車にひかれてここに来たってことは?」
頬を冷や汗が足らりと流れ落ちる。いや、有り得ないだろそんなこと。まさか深夜帯のアニメでよくやっているような展開が俺に起こったとでも?。
「俺、異世界転生した……?」
だとしたらだぞ、だとしたら。俺はスマホゲームのブレイクコードの世界に? そうすると、俺はモンスターを自由に召喚してそれを操れる能力を得たとか……。
よし、まずはデッキの確認だ。下手に危険なカードを使ったりしたら、巻き添えを食らってしまうかもしれない。もし火炎系のカードが実体化したら、ここら一帯が大火事だ。
30枚あるデッキを上から1枚ずつ指でずらして確認していく。ふと、俺はこのデッキがブレイクコードが配信された当初に作ったものだと思い出した。
間違いない。これはまだゲームのシステムになれていない頃に作ったものだ。
火や水などの属性と、
「ブ、
初めて作ったデッキはこんなのだったよなぁ、と懐かしんでいるその時。突然俺の後ろ辺りから少女が声をかけてきた。突然、本当に突然である。
「えっ、誰?」
あまりに急だったので肩をびくっと振るわせてしまう。振り向いてみるが、そこには誰もいなかった。
「見知らぬ方ですが恥を忍んでお願いしたいです! どうか、どうか私の友達を助けてもらえませんか!」
「助けてって……いや、それ姿も見せずに言うこと!? 悪いけど俺、今どういう状況なのかもわかんなくて」
「私の姿は見せられないんです! ごめんなさい! 私、能力無くてもレアだから……じゃなくて、いや、私の姿を見ても襲わないと約束してくれますか!」
目の前にある背の高い茂みの中から声がする。どうやらあそこに潜んで、俺に助けを求めているようだ。
いや、確実にあそこにいる。だって、ツンと2本の赤い角らしきものが飛び出てるし。なんだあれ? 角?
「見つけたっ」
「ふっ、私これでも自然に溶け込むのは得意でして、見つけられるはずが……ひゃわああああ!?」
雑草をかき分けるようにしてその奥を確認。そこには、こっちを見るなり尻餅をついて、全力で後ずさった女の子がいた。
樹木についている葉のような色のボサボサとしたお下げに、髪の色より深い緑の瞳。そして頭の上に生えた二本の赤い角。
普通の人ではありえない色で、どう見てもコスプレをしているようにしか見えない。森の中で、コスプレ。本格的だなぁ。
そんな彼女は下がりに下がって木に背中と頭をガツンとぶつけた。そして、くらくらとしながら口をわなわなと震わせている。
「あわわわわわ、約束できない間に、み、見られてしまいましたっ。やめてやめてっ! 私を食べてもデッキに入れても得はしないですよぉ!」
「いや食べないし! てか、女の子がデッキに入るわけないし」
食べてもって、性的にも物理的にも食べたりするわけがない。それに、女の子をどのように小さくすればカードとしてデッキに詰め込むことができるであろうか。無理、不可能。
「えっ。デッキに、入るわけが、ない…………ふぇっ、うっ、ふぇぇぇぇん!! ひどいよぉおおお!!」
デッキに入るわけがないという言葉の後、緑がテーマカラーの彼女の目から光が消える。
しばしぽかんとした後、突然緑髪の少女は大声を上げて泣きだしてしまった。それはもう耳を塞ぎたくなるような声量でわんわんと泣き出し始めてしまったのだ。
……俺、何か悪いことを言ってしまったのだろうか。
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