主人公が消えた日
一夜
第1話 【現代】-失踪-
01 フィーネの焦燥
「珍しいわね、フィーネがこうして皆を呼び出すなんて」
「う、うん。ごめんなさい、急に集まってもらっちゃって」
エイミの言葉にフィーネが申し訳なさそうに頭を下げると、サイラスが「なに、気にしないでござるよ」と快活に笑った。
「このメンバーが急に集められるのはいつものことでござろう?」
「ワタシも問題ありマセン。リィキャット巨大ロボット化計画の件でセバスちゃんに呼び出されてイマシタが、ドタキャンしてきましたノデ!」
「あんたたち、またこっそり妙なこと企んで……」
王都ユニガン――ミグランス城の城下町にして、中央大陸でもっとも栄えた都市であるこの街の一角に、いつもの旅の中心メンバーが集結していた。
カエル剣士にアンドロイドに魔獣と、あまりに個性的な集団に道行く人々がぎょっとした視線を投げかけてくる。
「何か面倒ごとでも起きたのか? それにしては〝奴〟の姿が見当たらないが……」
ギルドナのその違和感は当然のものであると言えた。
この場にいるのは、エイミ、サイラス、リィカ、ギルドナ、アルテナ、それに招集をかけたフィーネを含めた六名である。
時空を超えた因果と絆で結ばれ、幾度の冒険を共に乗り越えてきた彼らがこうして集結すること自体は、特段珍しいことでもない。ただ一つだけ、いつもの光景と異なる点があった。
いつもメンバーの中心にいる人物、アルドの不在である。
「うん、皆に集まってもらったのはまさにお兄ちゃんのことで……」
「アルドに何かあったの?」
「それが……」
フィーネはそこで言葉を切り、目を閉じて俯いた。
まるで言いたくないことを口にするかのような意味深な間。他のメンバーも何事かと思わず息を呑む。
ややあって、フィーネが覚悟を決めた顔で顔を上げた。
「お兄ちゃんがいなくなっちゃったの!!」
「…………」
全員が沈黙し、静寂が場を充たした。
「なあんだ、そんなこと」エイミが気の抜けた声で反応する。
「もっと深刻な事件でも起きたのかと思ったわ。アルドがいなくなるなんていつものことじゃない?」
「うむ。いつものように、またぞろ何処かで人助けでもしているのでござろう」
「シリアス値の急降下を検知。コメディドラマ展開への相転移を確認シマシタ!」
明らかに拍子抜けした様子のメンバーに、しかしフィーネは「違うの!」と必死に首を振る。
「いつもとは違うの! 昨日のお兄ちゃんの様子もなんだか変だったし……」
「様子が変? どういうこと?」
「フィーネ。落ち着いて、何があったのか話してみて」
アルテナがフィーネに一歩歩み寄り、その手を優しく握る。
フィーネはひとつ深い息を吐き、それから話し始めた。
「うん。あのね、実は――」
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