第7話 兄をいなくさせるために
翔があらわれたことは不都合であるが、逆に好都合である。おそらく翔は自分が普通の生活に戻れたのならいなくなると考えた。つまり翔がいなくなればみんな安心する。そんな中で翔がいなくなったのを理由にすれば誰からもこの生活に文句を言ってくる人はいなくなる。翔という存在を強くすることで自然と引きこもりの生活に戻ることができる。だからこそ今はしつこい翔をを排除するために我慢をして外に出ることにした。一年のリミットがあるということは知らないまま。
久しぶりに親と会う。それだけでもなぜか恐怖を感じていた。両親はわかってくれているのもわかるし見捨ててるわけでもないのはわかっている。でも怖い。階段をおそるおそる下りてリビングに入るため扉をゆっくり開けた。
「ったく。やっとでてきた」
そこにいたのは翔だけだった。
「お母さんは?」
「買い物に行った」
母がいないなら何も悟られずにいなくなる方法が聞き出せる。そう思った奈々は仕掛けることにした。
「翔だって信じるから。私は何をすれば成仏できるの?」
「わからん。まずは俺がお前のことを何も覚えてねーから目的もわからないんだ」
翔自身が何もわからないとどういう行動をすればいいのかわからない。
「もし記憶が戻らないで達成できなかったらずっとここに入れるの?」
「いやそれでもリミットは一年だけだ」
一年たてばいなくなるなら一年だけ耐えることでも成功といえる。
「だから、俺はお前と思い出を作りたい。記憶が戻る戻らない関係なく、俺との思い出を死で終わってほしくない」
「翔はずるい。結局は自分のためでなく私のためっていうんだ。」
翔に聞こえないくらいの声で言った。これこそ自分の兄なんだとも思えた。
「まずいな」
翔の言葉に涙を浮かべそうになっている中、死神の声が聞こえた。それと同時にあたりが真っ黒な空間にいた。
「安心しろ。ここでの会話は俺とお前にしか聞こえん。時が止まったと考えればいい」
「邪魔しないでって言ったよね」
「助言をしに来てやったんだ。感謝しろ」
いつも通り余裕の顔をしている死神だが、少し困った顔をしている。
「あんたが心配そうな顔をしてるってことは何かあるようね」
「翔は記憶がないなりに色々調べている。お前だって気付いているはずだ」
「もちろん」
奈々は翔がこの一日であり得ないほどの奈々について調べているのに気付いている。記憶がないのは信じた場合、奈々自身の気持ちを変化させる誘導がうますぎる。記憶があったときではあり得ない行動のとり方をしている。それには警戒しないとならないが、この数分だけで圧倒されてる状況火を重ねればどうなるかわからない。
「だから少し力を貸してやろうあの時みたいに」
死神は奈々に憑依をする力がある。そうすることで誘導にも負けないようにできる。
「だけどすぐに対策を練ってくるかも」
「神の差し金だしそこまでは予定のうちだ。それよりもここで契約をすればいい状況になったら憑依し状況を壊すことがかってにできてしまう。お前はそれでもいいのか?」
前回は心が弱くなった時に憑依した。しかし今は正常を保っている。この状態では憑依することができない。だから体を貸す契約をして自由に入れるようにする。つまり死神が望む未来に作り変えるのが簡単になってしまう。
「かまわないわ。どうせ一年たてば引きこもり生活に戻れる。あなただって自由に動きたいんでしょ。ならその時自由に体を使えばいいわ」
希望である翔はいつか消えもう何も残らない彼女にとって生きることは苦痛になる。翔に助けられた命だからむげにはできないが、楽しいことがない現状を乗り越えることは難しい。もし死神が憑依すればその時間は寝ているのと同じ状態になる。そっちのほうがましになる。
「よかろう。なら体を借りるぞ」
死神がだんだん薄くなっていく。それに合わせて奈々の体が重くなっていく。そしてだんだん力が抜けて行って眠くなっていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます