第八話 共同戦線②

よく寝た


夜の見張りって誰がやってるんだろう


少なくとも僕はやったことないな


夜型人間じゃないから夜中まで起きて見張りとかは無理です


まあ、朝型人間でもないから早起きして見張りとかも無理だけど


「さて、寝起きで辛いけど行くか」


――――――――――――――――――――


「違う、四組はこっち」


「あ、そうなの」


なんでわざわざクラスの配置の仕方をわかりにくくするのかな、うちの学校は


科学実験室と科学の先生の部屋が違う棟にあるし


結構謎なところがあるんだよ


ん?


「ねえ、その指どうしたの?」


指がまるで凍ったかのような色に変色している


任務に支障があるとまずいんだが……


「これは今、硬化してる」


「硬化って剣以外にも使えたんだ」


なんか防御に役に立ちそうだな


このくらいは城崎なら思いついてるだろうけど


「ところで、なんでいま指を硬化させてるの?」


「万が一不意打ちを食らっても剣だけは離さないように」


戦闘脳だな


精神的な適応力が高いのかな?


まあ、考えとしては間違ってもないけど


「その状態で指は動かせるの?」


「関節は硬化してないから大丈夫」


なるほど、関節を狙えば十分に効果がある、と


これはいいことを聞けた


「ここ」


「あ、着いたんだ」


思ってたより早かったな


「始める」


了解っと


それじゃあ、「抜刀」といくか


百秒数えとこう。忘れて時間切れとか大変だ


(敵数は七。近接二と中距離一、遠距離四か。メモメモ)


これが僕の考えた情報伝達手段


抜刀中はスマホとかは反応しにくいのでアナログで伝えたほうが良いだろう


スタンガンは抜刀中でも使えたから原因は回線のほうだろう


それにしても遠距離系多いな


弓使ってるやつはもともと弓道部とかなんだろうけど銃持ってるやつがいるのはどういうことだ?


しかもスナイパーライフルじゃねぇかM14


僕がP90とデグチャレフ以外で唯一知ってる銃火器


少なくとも日本国内でライフルの撃ち方指導してそうなところって自衛隊くらいなんだが


同好の士とやらにでも学んだのかな


あ、残り60秒しかない


近接倒しとくか


相変わらずスタンガン便利だな〜


あ、後20秒しかないし隠れとこう


(5,4,3,2,1,0)


脳内カウントダウンが終わると二人が電池の切れたおもちゃのように急に倒れた


「は?お、おい!どうした?!」


すると突っ込んでくる158cmほどの人型


容赦ないな、スナ持ちを撲殺する勢いで殴ってる


弓はやはり引くまでに時間がかかるらしい


あれは奇襲向きだな


まあ、そもそも捕虜にできるか怪しいのに容赦なく頭を殴ってる人がいるんだからまともに働けるかどうかすらわからないが


おーい、全員気絶してるよ


その殴ってる人さっきから痙攣の仕方がおかしいんだけど大丈夫なの?


「はい、そこまでそこまで」


こうでも言わないと止まれないのかなこの人は


「でも、まだ気絶してるかどうかもわからない」


「いや、さっきからその殴ってる人動いてないよ」


痙攣を除いたら


全く、なんで僕の周りにはこうも容赦のないひとばっかりが集まってるんだろう


類は友を呼ぶ?何だその言葉は?知らないな


よし、弘岡もこっちに来たみたいだし一旦会議を


ん、何だあのスナ。急に栄養ドリンク飲みだして



……あの、なんで君はこっち向いてるのかな?そしてその手に持ってるやつの先端をなぜこっちに向けてきたりするのかな?


「っ!!」


とりあえず思いっきり弘岡を引っ張って教卓の陰に入れておこう


ついでになんとなく嫌な予感がしたから僕も少し頭を下げておこう


すると鈍い音とともにさっきまで僕の頭のあった場所を銃弾が通過していった


(は?)


M14って銃弾が5.56か7.92かは知らないけど対物アンチマテリアルライフルじゃなくて対人狙撃銃スナイパーなんだよな


壁ぶち抜けるって対戦車のやつくらいしか知らないんだけど


少なくとも止まってるのは危険だということは分かった


少し動こう


こういうときは人を引っ張って動くか


「弘岡、こっち」


壁抜けとはいえ壁があると射線はずれる(と思う)


常に隠れて高速移動だな


そして外に出て、スナイパーを見た瞬間、その銃口がこちらを向いていることに気が付いた


(ヤバッ!)


さっきは鈍い音だっだが今度は甲高い音が聞こえた


――――――――――――――――――――


「助かった。ありがとう弘岡」


「とりあえず今はそういう時間じゃない」


まさかあのタイミングで刀を滑り込ませて防御できるとは


反応速度がとんでもないな


だが少なくともこれで弘岡の刀はあの銃の攻撃に耐えうることが分かった


「防御は頼める?」


「善処する」


よし、言い方は不安だけど、これでとりあえず時間は稼いでもらうか


攻略する糸口も無いわけではないし


「もう一発来るよ。防いで」


「ん」


そして先程と同じように銃弾を刀身に当てたが、今度は青い火花を散らしながら刀がぐるぐると回転しながら飛ばされた


まずい……


弘岡がいないとすべての攻撃が僕に集中する


そうなったら防御手段がなく、回避しかできない僕はかなり厳しい


(抜刀)


即座に刀を回収し、「解除」した


「ありがと」


さっきの青い火花の形が変だった


あのスクリューみたいな形


もし僕の予想があっていたらまだ対抗はできる


試すしかない


そして今度も、少し青い銃口から銃弾が飛んできたので「僕が」刀で受け止める


(大事なのはコントロールだ。これが成功すればあの攻撃は完全に攻略し、僕のできることも増えるが失敗すれば僕はこの刀を失う)


そうして僕は、抜刀の感覚を僅かに再現しながら刀を銃弾に当てた

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