第六話 把握と作戦

「武器になりそうなものはこれで全部か」


「わけわかんない装備を除いたらね」


これが一番怖い


手袋型や服型なども考えたがそういうのは考え出すときりがないのでとりあえず無視した


だがやはり怖さというものは残る


不安だ


「この装備、私達も使えるのか?」


「そういうのは帰ってからね」


装備の使用者の制限などまだまだ調べなければならないものも数多くある


情報がまだ全然足りていない、ということだ


それに今日、急に能力が切れた理由が分からない


あれは知っておかないと本格的にまずい気がする


装備にかけられた制限の内容は僕のようなもともとの戦闘能力の低い人にとって命に関わることもある


検証しなきゃいけないとはわかってるけど……


城崎、時間くれるかな……


帰ったら頼み込んでみようかな


「あ、運ぶ準備出来たぞ」


「確認したけど、道に敵っぽいのはいないよ」


見張りって面倒臭いな


「じゃぁ、予定通りに」


「了解」


そして僕は、本日二度目となる「抜刀」を行った


――――――――――――――――――――


疲れる


「ねぇ、この作戦明らかに負担が偏ってない?」


「それを考えたのは私ではないが」


いや、そうなんだけどさ


いくらなんでも減速状態のまま気絶した敵を一人で運ぶのは負担がかかりすぎている


「まあ、戻ったら休憩できるだろうから落ち着け」


そうだと良いんだけど


あれ?


「なんで能力発動させてるのに喋れるの?」


「そういえば」


「喋れるなら手伝ってよ」


「…………」


チッ、こっちが不都合なことに気づくとダンマリか


そのうえ、動いてない振りまでしてる


(ん???)


おいおい、まさか


「やっぱり減速されてる」


――――――――――――――――――――


あれから何度か確認したところ打刀(面倒だから刀でいいか)か僕本人に触れていると減速がキャンセルされるらしい


また一つ条件が分かった。これはいい傾向だ


そして結局僕一人で全員移動させなければいけないことが分かった。これは悪い傾向だ


「ふう、これで最後か」


刀に能力使用後のインターバルとかがなくて本当に良かった


おかげで途中ちょっとサボってもバレなかった


「城崎、今帰った」


須斎もしっかりこのクラスに馴染んでいるようだ


もう友達も数人いるらしい


須斎蒼井、侮れないな


僕が半年以上かかって一人も作れなかったものを一夜にして作るとは……


城崎?


誰だそいつは?初めて聞く名前だな


「で、今回の収穫は?」


「敵の能力はわからなかったが、装備はほぼ全て回収できたと思う」


「そうか」


「まあ、敵の能力なんで見てる暇があったら戦えって話なんだけどね」


相手の能力を丸裸にする余裕があるなら一瞬で無力化して後でゆっくり検証したほうがいい


どれだけ余裕があっても確実に勝てる保証のある戦いなんて存在しない……と、思う


というか、確実に勝てる戦いなら先に相手が降伏して戦いになってないと思う


戦いになった時点で負ける可能性は出て来てるんだ


「よし、捕虜と話をする。全員連れてきてくれ」


――――――――――――――――――――


「なるほど、ありがとう。その情報は使わせてもらうよ」


今度こいつに上手い演技のコツを教えてもらおう


いろいろ役に立ちそうだ


「それで、面倒くさそうなのはいた?」


「とりあえずいなさそうだな。大部分が支援系で他の一部も生産系だ。集団と戦ったら骨が折れるし、協力者にいたら大分楽になるがそいつらだけだと大きな脅威にはならない」


そんなこと言ってたっけ、あの人ら


どうやってわかったんだろう。やっぱりコミュ力高いのかな


あ、これも聞いとかないと


「そうそう、それより僕の装備の能力の検証していい?ちょっと気になることがあるんだけど」


「別にいいよ」


あ、良いんだ


じゃぁ試してみるか


――――――――――――――――――――


なぜ減速状態が解けてしまったのだろう


制限としてまず考えれることは行動だ


あの戦闘で行った何らかの行動が減速状態を解く原因となった、というものだ


まずは再現してみよう


(抜刀)


よし、ここまではいい。ここからスタンガンを持っているときと同じような手の形にしてと


そして僕は、あのときの戦闘とほとんど同じ行動をとった


しかし、減速状態が解ける気配はない


もちろん、戦闘中のすべての行動を記憶して再現できるわけではないので僕のまだ再現していない動きがキーとなった可能性もなくはないが


一度別の視点から考えてみたほうがいいかもしれない


(と、なれば時間制限か使用したものの制限だな)


だが、検証のために限られたスタンガンのバッテリーを使うのはまずい気がする


時間制限から確かめてみよう


そのため、僕は一度減速状態を「解除」した

そしてすぐさま「抜刀」しようとしたが、発動しない


「?」


もう一度試すと、今度は「抜刀」できた


(違いは何だ?)


そうして何度も試したところ、どうやら能力の発動にインターバルが必要だということが分かった


インターバル、あったらしいです


さっき無いとか言ってごめんなさい


インターバルはどうやら1秒らしい


強力な相手と戦うときはこの1秒が重要になったりするのだろうか


そして本題の時間制限について調べてみた


(抜刀)


――――――――――――――――――――


(84,85,86,87)


長いな


キリのいいところで終わってくれよ……


覚えられないと困る


(97,98,99,100)


世界が動いた


どうやら100秒がタイムリミットらしい


そして時計はさっきから1秒だけ進んでいる


減速倍率は100分の1といったところか


よし、少しずつ把握が進んできた


これで強力な敵と戦うときは少し楽になっただろう


よし、もう夜遅いし寝るか


城崎によると見張りは交代で入るらしい


そして僕には「休め」と


これは明日も随分とこき使われそうだ


少しでも体を休めておこう

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