第五話 共同戦線

「ということで、明日はよろしく」


「…………正気なのか?」


そうだよね、こんなこと初めて聞いたらまずは相手が冗談か正気か疑うよね


でも残念、城崎によると本気らしいんだよ


「城崎が行ってこいって」


「そう……なのか」


そうだ、ちょうどいいからここで言ってしまおう


「君もうちのクラスに入るならある程度は城崎に使われることを覚悟しておいたほうがいいよ」


「……分かった」


「さて、じゃあ早速準備に取り掛かろう」


「もう始めるのか?」


そりゃそうだ、準備なんていくらしても足りないんだから今のうちからしたほうがいいに決まってる


まあ、僕のこの癖は昔から忘れ物が多いからついたのだろうけども


「それもそうだな」


「じゃあ、改めてお互いの装備の詳細を話そうか」


「私の装備はこの袴で、能力は使用中周囲から見えなくなることだ。カメラなどにも映らない。赤外線探知サーモグラフィーなどは試したことはないが、音が出るから多分ダメだと思う」


なるほど


「思ったより詳しく話してくれたね」


もう少し隠してても別にいいんだけど

これじゃなんかこっちが隠すと悪いみたいじゃないか


「じゃぁ今度は僕の番だね」


信頼を損なわない程度に情報を出すか


「僕の打刀には恐らくだけど周囲を減速させる能力が宿ってる。減速倍率・制限とかはまだわからない。減速させる範囲もね」


よし、こんなところでいいだろう


多少隠してるところはあるが、ここまで言えば信頼関係を築けるんじゃないだろうか


「分かった。具体的な作戦はどうする?」


どうやらこれで納得してくれたようだ


「そうだね。まず君が身を隠して教室内に入って奇襲。そして僕が乱入して本格的に戦闘開始、とか?」


「良いな。それで行こう」


え、一発?

この人ほんとにちゃんと考えてるのか?


今になって須斎さんとの共同任務を成功させられるか不安になってきた


あ、共同任務するんだからいちいちさん付けしてたら大変だな


「ねぇ」


「ん?」


「共同作戦するときにさん付けしてたら大変だから呼び捨てでもいい?」


「ああ、別にいいが」


「じゃぁよろしく、須斎」


――――――――――――――――――――


その後城崎に聞いてみたところ次の調査場所は1-9だそうだ


「記憶にある限りは危険そうなやつはいない」と言っていた


安全そうで本性を隠している人や豹変した人がいなければ今回の任務は大丈夫そうだ


降ってきた装備が強力でもそれを使って人を攻撃できる精神性や、十分に活かせるだけの能力がなければなんの意味もない


そういう意味では、人を躊躇なく拷問したりできる上、頭脳明晰な城崎はとてつもなく恐ろしい


しかも、見えたことから推測すると城崎の能力は恐らく操作系、そこら中のものを操作していると考えられる


あいつの唯一の弱点である筋力が関係なさそうだ


そのせいか、校庭には大量の死体が転がっていた


ところで、あれは全て城崎一人でやったのだろうか


そうだとしたら恐ろしいが、他にいるとしても大きな脅威になるだろう


事実上城崎がもう一人いて敵に回っているようなものなのだから


(……考えたくないな)


だがやはり無視はできない


任務が終わったら城崎に聞いてみよう


――――――――――――――――――――


「じゃぁ、頼むよ」


「ああ」


そうすると、僕には彼女がどこにいるのか、いや、そもそもいるのかどうか認識できなくなった


「作戦通りドアが空いた隙に入ってね」


「わかった」


返事が来たってことは、近くにいるんだね


数分後、誰かが警戒するようにドアを開けて、そのままどこかに行った


おおかた、偵察でもしているのだろう。好都合だ


(GO)


予め決めておいたサインを出して向かわせた


これで僕の仕事は中が荒れ始めたときに乱入することくらいだ


彼女が失敗しなければ、だが


こんなことを言ってたらフラグになりそうだな


お、クラスの中が一気にうるさくなった


始まったみたいだな


と、いうことで僕は「抜刀」し、すぐさま教室の中に突入した


よし、全員須斎の方を見ていてこっちに対してなんの注意も向けていない


ぽくは実質的にとてつもない速度で走っているだけだから動体視力が良かったら分かってしまうこともある


今のところ誰も気付いていないし、大丈夫だろう


じゃあ、持ってきたスタンガンを使ってと


「全く、城崎のやつなんで学校にスタンガンなんか置いてるんだ?」


こういうところが怖いって言われるんだよ


まあ、確かにスタンガンは僕の能力にぴったりだけど


電気は光と同じ速さだからどれだけ減速しても体感では変わらないし


こうしてクラスにいる40人のうち、既に須斎が気絶させていた5人を除く31人を片付けた


しかし、後4人というところでその異変は起こった


(音っ!!!)


どうやら減速状態が解けたらしい


解除していないにも関わらず、だ


(やっぱり制限があったか!!)


だが敵は後4人


こんなこともあろうかと戦闘力の高そうな相手から気絶させていた


おっと、須斎は速いな

もう1人倒してる


スタンガンのバッテリーもまだあるし


「一人くらいやっとくか」


首に当てると、相手の体が、大きく震えた


動いている相手に当てるのもそんなに難しくないのかもしれない


その間に須斎が残り二人を気絶させていた


やっぱり、装備なしの純粋な戦闘能力なら須斎の方が上になるな


あれくらい強いってことは薙刀の大会でもいいところまで行ってたんだろうか


この学校、スポーツ系で強い人も結構いるし


「よし、じゃぁ完全に無力化するか」


「ああ、装備の回収ね」


「いや、普通の武器もだ。普通の武器で危険な人も結構いる」


「そっか」


確かにそれもそうだな

須斎とかまさにそれだし


と、いうことで僕たちは一人ひとり装備や武器になりそうなものを外していった

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