第二話 敵と敵と味方?

さっき「人生最高速度を更新できそう」とか言ったが少しだけ訂正させてほしい


✕人生最高速度

〇人類最高速度


人類で最も早がったのが確か100m9秒58だったはずだから今多分僕はその速度を余裕で超えている


さっきの場所から今通り過ぎた電柱まで約700mなのだがまだ走り出してから1分も経っていない


何ということでしょう


空からの落下物は平常化バイアスだけでなく人類の限界にまで勝利してしまったようです


一年くらい前にこれ降ってたら陸上やってたのに


「あ、やっと学校ついた」


やっとって言っても1分半くらいしか経ってな


ーその瞬間、止まっていた「音」が急に鳴り出したー


「っ!!!」


そこら中から鳴り出す戦闘音


とはいえ、冷静になってみるとそこまで騒音というほどでもなかった


どうやら学校では既に戦闘が始まっていたらしい


それにしても、なんで直前まで戦闘音が聞こえなかったんだ?


誰かがこのあたりに結界でも張っているのか?

だとしたら早めに「アイツ」回収してここから離れたほうがいいのか?


どちらにせよ、中を見ないことには何も始まらない


今学校がどうなっているのかを確認しなければ


――――――――――――――――――――


校内の状況は予想通りと言えば良いのか


地獄絵図と言えば良いのか

そこら中に「元」人間の死体が転がっていた


これはアニメで死体に慣れていなかったら精神的に厳しかったかもしれない


「あいつ生きてるかな……?」


どうせ死体の顔を見ても判別できないがとりあえず一人ひとり確認していく


そしてそこに見知った顔が無さそうなことにひとまず安堵を覚えた


「てか、皆いくらなんでも荒れすぎだろ」


蜃気楼高校うちっていわゆる「進学校」ってやつだったんだけど


それが一日でこうも変わるものか?


とりあえずは協力者を探さないと


こんな荒れたところでの単独行動は危険すぎる


「ん?」


あいつ……


次の瞬間、地面から生えてきた巨大な蔓に締め上げられ、僕は意識を手放した



――――――――――――――――――――


「それにしたって、あんなに乱暴にすることは無かっただろ」


「だってお前、普通に話しに行っても絶対俺のこと信用しないだろ」


いや、それは確かにそうかもしれないけどさ


流石に唯一の友人だと思っていた相手から認識された瞬間縛りあげられて連れてこられたらメンタル的にもくるものがある


もう少し他人に配慮できないのかコイツは


いや、他の人には配慮しているからこういった方が正しいのか


「もう少し僕に配慮できないのか?」


「いや、する必要ある?」


良くも悪くも蜃気楼高校で一番僕と仲が深いのはこいつ、城崎聖なんだが


過去の僕に会う機会があれば言ってやりたい


こいつと深く関わるな、と


まあ、無理だろうけど


「とりあえず校内の人の人心掌握はなんとかなったから、みんなの持ってる装備の能力調べてこい」


装備?


「装備って?」


まあ、なんとなく予想はできてるけど


「さっき降ってきたやつのこと、俺たちは『装備』と呼んでいるんでな」


「いや、僕自分の装備の能力もわからないんだけど」


多分、対象の減速とかだと思うけど


「じゃあ、お前の装備の能力の把握も兼ねて」


「…………わかった」


そう言って僕は、クラスメイトのほぼ全員が隅に座って震えている教室を後にした


確か、まずは1-6だったな


本当は人と話せる自信ないし、こういうことは遠慮したいんだけど


まだあいつの実力が未知数な以上、下手に逆らうのもまずい気がする


実際、意識外からの攻撃とはいえ、僕はあいつに一瞬で拘束、無力化されたんだから


早い段階で装備の把握をしてあいつへの対抗手段も考えないとな


じゃないとなれない剣術であいつと戦わなければならないかもしれない


そういう意味ではこのタイミングであいつの視界から外れたのは良かったのかもしれない


まあ、まだ監視されていないという確証は無いんだが


それに、腐れ縁だから協力するのも良いだろう


「1-6は……ここか」


とりあえずはついたけど、なんて言って入ればいいんだ?


「失礼まー」


その次の瞬間、僕に迫ったのは挨拶ではなく鋭利なナイフだった


―――――――――――――――――――――


危なかった


あの瞬間、挨拶がこれでいいのか迷って一瞬立ち止まったおかげでナイフの動線から外れて、髪に掠るだけで済んだ


挨拶を迷っていなかったら今頃は両目が見えなくなっていたに違いない


(よく見ればナイフじゃなくて棒の先にナイフを付けた簡易薙刀じゃないか)


こんなもん室内で振り回すなよ


それより、僕の刀の能力を起動させなくては


確かさっきは抜剣と考えた時に起動したから


(抜刀)


僕は刀に手を置きながらそう考えた


すると今度は左から日本刀が襲ってきた


(減速出来てない?!)


これは本格的に刀一本で戦う未来が見えてきたかもしれない


もしかして一日で使用できる回数が決まっているということも


とりあえず今は刀で戦わないと


「抜刀」


この時、さっきの勢いでこの言葉を口にしたことが運命の分かれ目だったのだろう


次の瞬間、相手2名の動きが止まった


相手の持っている武器は1人が簡易薙刀、もう1人が日本刀だ


今僕の持っている太刀と少し大きさが違うのでもしかすると日本刀には太刀と脇差と薙刀以外にも種類があるのかもしれない


(とりあえず奪っとくか)


さっきの行動を見るところ、結構戦い慣れてるみたいだし、このまま武装させて置くのは危険だ


武器を奪っておこう


決してこれは窃盗ではなく、一時的に預かるだけだということを忘れないでほしい


そうして僕は、2人から武器を回収し、改めて考えることにした


「で、何で能力が起動したんだろう」

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