人類戦線
さむほーん
胎動編
第一話 戦線を張れ
「それ」は幾筋もの光とともに突然始まった
20xx年11月3日日本時間午前7時30分
人類は降ってきた特殊装備と共に新たな時代を迎えることとなった
そしてそれはこの日もいつも通り登校をしていた学生にとっても大きな変化になり、学生の人たちもさぞかし驚いたことだろう
普段は何に対しても動じないことに自信のあるこの僕ですら急に降ってきて目の前の道路に今現在刺さっている鞘付きの剣に驚きを隠せないのだからね
いや、鞘の形からすると両刃ではなく片刃のため、「鞘付きの剣」というよりは「鞘付きの刀」と呼ぶべきかもしれない
それにしても太刀1本だけとはアンバランスじゃないのか?武士は太刀と脇差が標準装備だと以前小説で知ったんだけど……
……現実逃避はよそう
「これ多分あの光の中にあったやつだよなぁ」
ってことは他の光の落ちたところにもこんな感じで刀が落ちてるのか?
しかしどうすりゃいいんだ?
ということで少しだけ記憶をさかのぼってみよう
――――――――――――――――――――
今日は少しだけ遅れて家を出た。
とは言っても午前7時頃だ
だがうちの高校はこのくらいの時間では間に合わない
これば別に僕の家が学校から遠いというわけではない
家から徒歩で通える範囲だ
ならなぜこのようなことが起こるかというと我らが蜃気楼高校は異様に始業時間が早いことで有名なのだ
なんと午前七時三十分始業
蜃気楼くらいに突然始まるのが良いそうだ
きっと初代理事長は頭がおかしかったのだろう
家から徒歩四十五分という素晴らしい立地にも関わらず、遅僕の刻日数がとんでもない事になっているのときっと関係があるんだろう
当然この日も他の皆と一緒に遅刻する筈だった
そもそも、七時三十分という時間に学校に到着できる人は限られているので「全校生徒の四分の三が遅刻する学校」とも言われたりする
そのため、皆午前八時頃に学校に集まりだし、八時二十五分からの2時間目に間に合うようにする
要は1時間目は要らないのだ
全く、初代理事長は何を考えてこんな時間割にしだのか
だが今日くらいは少しだけ早めに着けそうだ
ちょっと「速く」歩くか
すると、空から何か降ってきた
――――――――――――――――――――
以上が僕の覚えている今回の現象に関することだ
わからん
やっぱり他の人のとこに落ちてきたものとの共通点とかから考えるしかないよな……
とりあえず情報共有が優先だ
学校に行こう
こんな非常時でも平常化バイアス全開でいつも通り学校来てるやつ、結構いるはずだ
それに学校に着けば「アイツ」とも合流できるだろうし
―――――――――――――――――――――
そして、僕は学校で平常化バイアスが僕の思っているよりもずっと弱々しいことを知ることになった
どうやら平常化バイアスというのは一定以上の衝撃を受けると壊れるらしい
学校に近づいているんだがさっきから戦闘音のような音が鳴り止まない
この辺を「閑静な住宅街」とか言って売り出していたのはいつのことだっだろうか
しかし、一般人がこのような激しい戦闘音を出せるってのはどういうことだ?
やっぱりさっきの刀のせいか?
でもこの音、刃物の音の他にも爆発音とかも聞こえるんだよなぁ
「あ、今なんか光った」
こんな快晴で雷は落ちないだろうし、この状況なら多分誰かの攻撃だよなぁ
ってことは少なくとも光系、爆発系、物理系、雷系の四種類があるってことか?
ゲームみたいだな
しかし、こんなに物騒ならいつ襲われてもおかしくないな
用心しないと
じゃあまず前後左右から
左右:何もなし、誰もいない
前:何もなし、誰もいない
後ろ:何もなし、誰もい「爆炎砲っ!」
!!?
…………何もなし、誰もいな「ブースト!!」
誰かいるみたいです
こんな強烈な攻撃、か弱い存在を狙って撃つなよ(50m走九秒台)
とりあえず敵対意思がないことを示して
「待って、僕はただここを歩いていただk」
「クソッ当たりやがれっ」
口悪いよ君
でも、ちょっと交渉は厳しそうだな
じゃあ戦闘って言ってもこの刀くらいしか
……あれ?この刀メッチャ光ってるんですけど
何なら紫電っぽいのも出てるんですけど
これ使えんの?
使った瞬間紫電が体を貫き、僕の意識は薄れていった
みたいなことにならないよね?大丈夫だよね?
でもこれ以外に特に対抗手段もないしなぁ
……使うしかないか
よし、抜剣!
…………抜けないんですけど
…………抜剣!抜剣!抜剣!抜剣!
刀だから抜剣じゃなくて抜刀か
あ、やっと抜けた
日本刀って曲がってるから抜きにくいのかな?
これからは抜身で持ち歩くべきか?
それにしてもさっき隙だらけだっただろうに、なんで攻撃してこながったんだ?
「?」
止まってる…………
――――――――――――――――――――
どういうことだ?
いや、原因がこの刀だということくらいはすぐにわかるんだが
どういうことだ?
相手を止める能力か?
実際さっきから30秒ほど経ってるけど少しも動いてはいな……
「手の位置が違う……」
ってことはわずかに動いてるのか?
停止ではなく減速?
「もう少し検証したいけど……」
何秒持つかもわからないんだよな
一旦離れよう
そして学校に行こう
他の奴らがどんなものを持っているかも調べないと
それにできるだけ早く「アイツ」とも合流したほうがいいだろうし
まあ、「アイツ」が生きてるとも限らないし生きてたとしても仲間になってくれるかもわからないが……
最悪他の奴でも大丈夫だろ
他の知り合いいないけど
ということで
「全力疾走なんて何年ぶりだ?」
僕は学校まで人生最高速度を余裕で更新出来そうな速度で猛ダッシュを始めた
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