おもいでのメロディ
相朱 愛
何か楽しいことないかなー
夏のよに 響く音色は しの記憶
◇
「ねーつまんないねー」
明里は前の席の由美の背中に向かって、スマホを突っついている。
「何よ。また帰りにスタバとか寄ってく?」
由美は背中のスマホを払いのけて、振り向いて言った。
「えースタバは一昨日行ったし、金欠だから止めとくー」
明里はふて腐れたような顔でスマホの画面を見始める。
「じゃあ何?近所の公園でも行く?」
「それもなー。パッとしないなー」
明里のうだうだに付き合っていると4時間目のチャイムが鳴った。
「はーい席について。授業を始めますー。」
4時限目、化学の樫村先生が教室に入ってきた。
「起立、礼、着席」
昼休み前の一番かったるい授業が始まった。
◇
「ねぇ知ってる?また出たんだって」
「なになに?何が出たの?」
「深夜の音楽室、誰もいない時間にピアノが鳴ってたらしいよ」
「うそー。誰かが忍び込んだんじゃないの?」
「それが当直の先生も誰も見てないらしいのよ」
「ほんとー?しんじらんないー」
◇
明里はぼんやりしながらホウキを左右に振っている。
「ほらちゃんとゴミ集めないと掃除終わんないよ」
由美は明里の脇腹を肘で小突く。
「うぐっ。わかってるわよー」
明里はたらたらとホウキを振って周囲のゴミを集める。
「しかし今さら七不思議とか、ないわー」
「何言ってるのよ」
「いやーさっき廊下で話してるの聞いてさー」
「あー。また何か出たらしいね」
「由美はどう?いると思う?音楽室の幽霊」
「いないんじゃない?もしピアノが鳴ってたんなら別の原因だと思うけど。」
「別の原因ねー。何だろ?風とか?」
「風でピアノは鳴らないわよ。もっと別の、例えば何か物が落ちてきたとか」
「まあ実際、そんなとこなんだろうねー」
明里と由美はゴミをちり取りに集めてゴミ袋に詰めていく。
「でもまー見てみたいっちゃあ見てみたい気もする」
明里はホウキを片しながら由美の反応を伺う。
「えー夜中とかめんどくさくない?」
「まーね。家出るといちいちうっさいし」
「でしょー」
いっぱいになったゴミ袋の口を縛って、由美はゴミ捨て場に持っていく。
「七不思議の幽霊かー」
ホウキを仕舞った掃除用具のロッカーを閉じながら、明里は1人呟いていた。
◇
「さっきの話だけどさー」
帰り道、明里は自転車を押しながら由美と歩いてる。
「何のこと?」
「あのピアノのやつー」
「ああ。あれ」
「うんー、由美今夜暇だったら行ってみない?」
「え?…まじ?」
「うん。何か最近楽しいことあんまないし、ちょっと気晴らしもかねて」
「気晴らしって。あんた他にやることないのー?」
「ないから楽しくないんじゃん」
「まあ、そりゃそうか。」
公園では小学生達が楽しそうにブランコの周りを走り回っている。
「えでもホントに行く気なの?」
「何か深夜の学校とか面白そうじゃない?」
「えーそういうのは小学校で卒業しとけって」
「そう言わずにさー」
「うーん」
「行ってみようよ~」
「…はあ。しょうがないなぁ」
「やったー!じゃあ夜10時ごろ、由美んちのマンションの駐輪場で待ってるから」
「はいよー」
由美と別れた明里は自転車で帰路に着いた。
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