人狼の嫁探し 5
人狼のグループを全て女性に性転換をしたら、彼女たちは女風呂を覗きに、街の方へと走って行った。
残された僕とタカオは、しばらく
「誰も居なくなったし、帰ろうか……」
「……そうだね。街のギルドに帰ろう」
帰り道、歩きながら人狼たちの話をする。
「女性に変えちゃったけど、平気かな?」
僕がタカオに話を振ると、タカオは軽い感じで答えた。
「大丈夫じゃないか。女風呂を覗くとか言ってたけど、女が女風呂に入るのは普通だし」
「あー、うん、まあ、それはそうなんだけど」
「俺たちだって女として何とかやってるだろ、あんまり気にしなくて良いんじゃないか?」
性別が変るのは大問題だと思うのだが、タカオはそこまで気にしていないらしい。
……うーん、本当に大丈夫だろうか?
色々と心配をしながら、街のギルドに戻ってくると、受付員のエノーラさんが僕らの方へ走ってきた。
「ユウリさん、確か『治療』の魔法を使えましたよね?」
「はい、使えますよ」
「では、温泉施設の『松ノ湯』に向って下さい。女性の人狼の方々が、目を痛めてしまって、今すぐ治療が必要なんです」
「分りました、では、すぐに向いますね」
隣でタカオがボソリと言う。
「裸を覗こうと思って、光防御魔法の
温泉施設に歩いて行くと、店の前でオーナーが待っていた。案内をされて、中に入ると、10人あまりの人狼が、休憩所の長椅子に寝かされていて、目には冷やしタオルが掛けられている。
まぶしい
「では、いきますよ。この者たちの目を治せ『
全員の視力を回復させると、タオルを外して起き上がってきた。
辺りを見渡して、僕らを見ると、人狼のリーダーのフィルベルトが声をかけてきた。
「治療してくれて助かった。お前、『キュア』の魔法も使えるんだな」
するとタカオが胸を張って答える。
「おう、もちろん『ヒール』も使えるぜ。ユウリの『ヒール』は骨折も
「すげぇな。ところで、俺たち、もう男には戻れないのかな?」
フィルベルトが聞いてきたので、僕は
「戻れますよ。男に」
「本当なのか? どうすれば戻れるんだ?」
かなり必死になって聞いてきた。やはり戻れるなら戻りたいのだろう。
僕が答えようとすると、タカオが前に出て、こんな回答をする。
「元に戻る為には、神の呪いが解ける、神器のようなアイテムが必要らしい」
フィルベルトが絶望的な顔をして、さらに聞いてくる。
「……それって、戻るのは、ほぼ不可能なんじゃないか?」
「そうか? 探してりゃあ、そのうち見つかるだろ」
「いや、簡単そうに言うが、かなり難しいと思うぞ……」
呪いを解く神器が必要なのはタカオだけで、他の人はすぐに戻れる。そう、僕が言おうとすると、人狼の人たちでこんな会話が始まった。
「フィルベルトさん、あきらめましょうよ。女になっても何とかなりますよ」
人狼の1人が、フィルベルトに向って言う。
「いや、俺はあきらめない。呪いを解く神器とやらを見つけだしてやる。お前らはこれからどうするんだ?」
「そうですね。男に戻るのはあきらめて、同族の男を引っかけて、玉の
これを聞いて、賛同する者が現われた。
「そうだな。もっと裕福になるために、玉の輿を狙うのも手かもな」
「もともと村の男女比がおかしいんだから、少しくらい女に変ってもいいかもしれないな」
同族の意見を聞いて、フィルベルトも少し納得する。
「まあ、そうかもな。死んじまったわけじゃないし、生きてりゃ良い事もあるか。俺もしばらく神器を捜索して、無理そうだったらあきらめて村に帰るわ」
なんだか話がまとまってしまった。こうなると簡単に元に戻れるとは言いだしづらい雰囲気だ。
今後の方向性が決まった所で、フィルベルトがこんな事を言いだした。
「さてと、ここには素晴らしい治療の使い手が居る。再び目がやられても大丈夫という訳だ。また光防御魔法と対決と行こうじゃないか!」
「おう」
「やってやるぜ!」
……コイツら、懲りずにまた覗きをする気なのだろうか?
僕があきれているとタカオが人狼たちに警告をする。
「ここの風呂の光防御魔法は完璧だぜ、あきらめろ」
「やってみなくちゃ分らないだろ!」「そうだ、そうだ!」
人狼たちから批難をくらうタカオ。しかしタカオはひるまない。こんな事を言う。
「風呂の防御は完璧だが、男女共有の温水プールのエリアには光防御魔法がかかっていないんだ。つまり、裸は無理だが水着なら平気って訳さ」
……まともな事を言うと思ったのだが、これだ。有力な情報を得たフィルベルトは、仲間の人狼たちに指示をする。
「よし、野郎ども、水着に着替えてプールに移動だ」
「おう!」「水着でも充分だぜ!」
ドタドタと全員がプールに移動していった。
のぞき行為は問題だが、冷静に考えれば、
この後、人狼の人たちは、何日か滞在して、街を出て行った。
ほとんどの人狼は、出身の村に帰るのだが、フィルベルトだけは、呪いを解く神器を見つける為に、各地を回ってみるらしい。
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