護衛任務 18
タカオがフレディ君とパーティーを組んで、冒険をしようと言い出した。
フレディ君はまだ10歳くらいだ。いくらなんでも、それは無茶だ。
「冒険は危ないから無理だよ」
僕が言うと、教会の神父さまも同じ事を言う。
「そうです、子供に冒険をさせようなどとは
2人に反対されたのだが、タカオは軽い調子で、こう答えた。
「もちろん危険な冒険はしないさ、ジャッカロープを退治するくらいの、初歩的な冒険だよ」
それでも危険な気がする。ジャッカロープは意外と手強い、怪我をするんじゃないだろうか。
そう思っていたのだが、神父さまが意外な反応をする。
「ジャッカロープが相手ですか、それならば大丈夫でしょう」
それを聞いて、僕はあわてて反対をする。
「えっ? 危険じゃないでしょうか? フレディ君も危ないと思うよね?」
「お父さんを手伝って、何度か戦ってるから平気だよ」
「そ、そうなの?」
「戦闘は俺がメインで戦うし、もし、怪我をしてもユウリの回復魔法がある。大丈夫だって! 神父さん、この村でよくジャッカロープが
「村の者を呼んで来ます。しばらくお待ちを」
しばらくすると、神父さまは、農家の人を何人か連れてきた。ジャッカロープは畑を荒らす害獣だ。タカオが退治すると言うと、村の周辺の地図を持ってきて、喜んで場所を教えてくれる。
農家さんが他の農家さんを呼び、気がついた時にはかなりの村人が集まっていた。こうなってしまうと、もう断れないだろう。
場所を教えてもらうと、いよいよ狩りへと出発する。かなりの数の村人に見送られて、僕らは村を出た。
村を出て、畑の中の道を歩きながら、タカオがフレディ君に聞く。
「フレディ、父ちゃんと一緒に戦った時、どんな武器を使ってた?」
「棍棒だったよ。ボクにまだ刃物は危ないからって、剣は使わせてもらえなかった」
「そうか。
「ああ、うんちょっと待ってね。ええと、これなんかどうだろう? 重いかな?」
僕は、子供でも扱えそうな、30センチくらいの小さなメイスを、倉庫魔法から取り出して渡す。大きさはトンカチくらいだが、鉄で出来ているので、そこそこ重い。扱えそうかどうか、とりあえず、フレディ君に渡してみる。
「重いけど、これくらいなら大丈夫だよ。
「じゃあ、それをあげるね。基本的には僕たちが戦うけど、いざという時には、それを使ってね」
「分ったよ、ありがとうユウリお姉ちゃん」
フレディ君はそう言って、ニコッと笑う。
かなり余裕がありそうに見えた。意外とジャッカロープと戦い慣れているのだろうか? そうだとしたら、農家の息子さんはたくましい。
フレディ君は、僕のあげたメイスに夢中だ。色々とイジりまわして感触を確かめている。
そんな中で、タカオが僕のそばにやって来て、小声で言う。
「フレディの魔力適正が跳ね上がったのって、ユウリが何かしたんだろ?」
タカオは勘が鋭い。嘘をついてもバレてしまうだろう。ここは素直に話そう。
「うん、まあ、ちょっと魔力適正が上がるスキルを渡したんだ」
「やっぱりそうか。それで、これからフレディのレベルを上げる訳だけど、俺たち、1レベルから2レベルに上がるまで、けっこうな数のジャッカロープを狩ったよな?」
「うん、そうだね。20匹くらいは狩ったような気がするね」
「つまり、入ってくる経験値を2人で2等分だったと考えると、1人当りにつき10匹が必要な訳だ。今回は3人だから、合計で30匹が必要になる。けっこう時間がかかると思わないか?」
経験値の分配方法は、よく分らないが。なんとなくタカオの計算が正しい気がする。
「そうだね。そうなると意外と時間がかかるかも」
「ここに俺たちは建築ギルドの護衛という依頼で来ている。今、建てている
「……それはかわいそうだよ。何とかならないかな?」
「そこで俺に考えがあるんだ。ユウリは俺の時に、複数のスキルを渡せるみたいな話をしただろう。フレディに、さらに取得経験値が増えるユニークスキルを付けちまえば良いと思うんだ」
「ああ、なるほどね。できるかどうか分らないけど、やってみるよ」
僕は
「フレディ君、ちょっと『おまじない』があるんだけど、試してみる?」
「うん、お願いします」
「では、ちょっと目を閉じていてね。全ての経験において、この者の人生を豊にせん事を『取得経験値、増大』」
僕がそう言うと、フレディ君の体がぼんやり光った。本人は目を閉じていたので気がついていない。
「もう目をあけて良い?」
「うん、大丈夫だよ」
よく分らないが、おそらくスキルを付与できたと思う。
フレディ君の付与が終わると、タカオが小声で言ってくる。
「よし、じゃあ、次は俺の番だ。そのスキルをくれ」
「だめだよ、タカオは3っつの願いをかなえたじゃないか」
「ちぇ、ケチらなくても良いじゃないか、そのスキルもくれよ」
そんな話をしていると、フレディ君が声をあげる。
「あっ、あそこにジャッカロープが居る!」
「よし、俺がサクッと退治して来てやるぜ!」
ジャッカロープを見かけると、タカオが迷わずに突っ込んで行く。
あわてて僕とフレディ君は、その後を追いかけはじめた。
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