導きの神、ユウリ 3

 容姿が決まり、佐藤タカオはとても満足そうなので、僕は話を進める。


「新しい姿は気に入ったようですね。二つ目の『ユニークスキル』は何を望みますか?」


 そう言うと、佐藤タカオはあごに手を当てて考え始めた。


「一つ目は以前から考えていたから直ぐに決められたが、三つも貰えるなんて考えて無かったからなぁ…… そうだ! 別にスキルじゃなくても『要望』みたいなリクエストでも良いんだろ?」


「ええ、構いません。しかし、神でも出来る事とできない事はあります。とりあえず言ってみて下さい」


「異世界転生をする役目の神様ってさ、俺のイメージだと男の神様じゃなくて、美少女の女神様なんだよね。できれば担当を女神様に変えてくれないかな、かわいらしくてムチムチで胸の大きなエルフ耳の女神様が良いな! 服装は、魔法少女みたいな格好で、パンツが見えそうなくらい短いミニスカートが良い。それが二つ目の『要望』だぜ!」


 佐藤タカオが鼻の下を伸ばしながら、興奮気味に言う。まったく、この男は……



 この『要望』に、どう答えようか悩んでいたら、マグノリアス様から念話が入る。


「私の隠れている柱の陰までいらっしゃい」


 なるほど、ここで女神であるマグノリアス様に仕事を引き継ぐわけか。

 僕は柱の陰に移動すると、少し落ち込みながらマグノリアス様に報告をする。


「ちょっと僕では無理だったみたいです」


「大丈夫です。あきらめないで、あなたにだってできます」


「いや、でも、あの人、美少女の女神とか言ってましたよ?」


「神の力の前では、不可能な事など無いのです。行きますよ『神のいたずら、性別の反転』」


 マグノリアス様が呪文を唱えると、僕に向って小さないかづちが走った。体に静電気のようなものがめぐる。


「痛っつ、何をするんですか?」


「これであなたは女神になりました」


「えっ?」


 何を言われたのか訳が分らず、一瞬、頭が真っ白になった。

 その後、慌てて胸を触る。すると、これまでなかったボリュームがそこにはあった。次に股間を触る、そこにあるはずの物は無くなっていた。



「ちょっと、これ、どうするんですか!」


 僕は強く抗議をするが、マグノリアス様はにこやかに微笑みながら、冷静に対応をする。


「あの魂の願いを全てかなえた後で、すぐに元に戻れば良いのです。おそらく5分も掛からないでしょう、短い間の辛抱しんぼうですよ」


「……まあ、そうですね。早く願いを叶えて、異世界に出て行ってもらいましょう。はぁ……」


 僕は大きなため息をついて、柱の陰から、再び佐藤タカオの前に出る。



 恥ずかしがりながら、僕は再び自己紹介をする。


「……あの、ちょっと、女性になってきました。導きの神ユウリです」


「さっきの神様か? 神様っていうのは女にもなれるんだ? でも、元男じゃあなあ」


 そうい言いながら、佐藤タカオは僕の胸を凝視ぎょうしして、鼻の下を伸ばす。

 そして、舐めるように僕の体を見た後に、ニヤけながら言った。


「ふーん。まあ…… いや、なかなか良いな。これはこれで有りかもな」


 いや、ずっと胸を見ていないで、さっさと願いを言って、どっかに行ってくれないかな……



「ええと、そろそろ三つ目の『ユニークスキル』を決めてもらえないでしょうか?」


 いやらしい視線に耐えきれず、僕がやや切れ気味に言うと、佐藤タカオはようやく決めたらしい。


「うーん、そうだな…… 決まった、そうしよう! じゃあ、三つ目の『要望』を言うぜ! この女神様と一緒に、異世界を冒険したい! 駄女神様との冒険のスタートだ!」


「へ?」


 僕が間抜けな声を出していると、足元に魔方陣まほうじんが現われて、僕たちは光に包まれた。

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