瑠璃色の鳥と灰色の鳥

プロローグ

静かな森に、葉を叩く雨粒の音が絶え間なく響く。


普段は光が差し込む美しい森も、雨に濡れるとそれぞれが暗く染まる。


深い瑠璃色の美しい鳥が、大樹の洞から延々と振り続く雨を眺めていた。


覚えた心細さは恐怖ではない。ただ、寂しかった。


いつからこうしていただろう。


いつまでこうしているのだろう。


不意に羽音が聞こえた。


「お待たせ、迎えに来たよ」


大きな灰色の鳥が、洞を覗き込んでいた。


青い鳥は目を見開いてしばらく固まった後、拗ねるようそっぽを向いた。


灰色の鳥はそれすらも愛しいようで、くすぐったそうに笑う。


「ほら、行こう?」


青い鳥はそっぽをツンと向いたままだ。


「せっかくの綺麗な羽が湿気っちゃうよ」


青い鳥はちょこっと悩んだ素振りを見せたあと、毛繕いを始める。


灰色の鳥は洞に入って青い鳥を容赦なく奥から押し出していく。


むくれながらも、出口へ追いやられてゆく青い鳥。


青い鳥の顔を見て灰色の鳥はクスリと笑い、愛おしげに頬を擦り寄せる。


「雨止んだよ。今のうちに飛んで行こう。ね」


青い鳥は抗議するように空に視線をむける。


雲の隙間から光が差し込んでいるが、遠くにはまだ暗く重たい雲が見えた。


「それでも行こう。次雨宿りする時は一緒だよ。これからずっと」






深い深い森の奥。


木々の隙間から零れる光のカーテンを浴びるように飛ぶ、2つの影が楽しげに飛び立って行った。

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