4.

 第一報が入った時、ヴァールは出撃に備え、愛機の整備に立ち会っていた。

 一言目を聞いた時点では眉をしかめただけだった。常ではないが稀にある程度の小事だと認識したからだ。

 だが息を整えながら続きを告げた兵士の言葉に驚かずにはいられなかった。

 その日、五人の若い兵士が事件を起こした。

 訓練の最中、突然の発砲。乱射。そして逃走。近くの村にて籠城し、鎮圧にあたった部隊と未だ交戦中だという。多くの民間人が巻き込まれたという。

 彼らだった。

 ヴァールを慕い、ともに夢を見た彼らだった。

 何が起きているのか理解できないまま、ヴァールは現場に駆けつけ、そして目の当たりにした。

 炎に包まれる集落と飛び交う銃声。男、女。子ども、老人。兵士、村人。何の区別もなく、攻撃された者たちの骸が、集められることもなく絶命したその場所に横たえられていた。

 戦場よりも死に満ちた光景だと思った。

 その中心に彼らがいた。

 しかしヴァールが知っている彼らではなかった。夢や希望を語ったあの顔つきは失われていた。ヴァールに向けた眼差しに、輝きは微塵も見られなかった。




「まだ見ぬ戦場への不安と緊張から、狂ってしまう兵士がいる。常ではないが、珍しくもない。そしてやむを得ず仲間を射殺することも、稀に在る。軍人としては普通のことだ。それなのに、どうしてか俺には大きな傷が残ってしまった」

 そう話しながらどこに目を向けることもできず、ただただ手のひらを見つめるだけだった。

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