6.
輪になってのぞき込んだ、その場所にあったのは。
「以外と大物が落ちてるもんだな」
ザーイムは感心して声を上げた。彼を慕う村の若者たちが後に続く。
「鍋に、山牛の毛皮に」
「なんだ、これ。車輪か?」
「盾とか剣とか、いつの時代だよ」
口々に詠み上げたのは、山中で見つけた落とし物の数々。特にカナズとワアダの近辺に絞って捜索した結果だった。
彼らは今、ビルカについての手がかりを探していた。
「このマントとか落とし物にしては新しめだけど関係ないかな」
「いや、サイズが違いすぎるだろ。ん? なんの紋章だろうな、これ」
「どうせどっかの金持ちのだろ」
身のない話が続いていく。やはりそう簡単には手がかりなど見つからないかと皆が肩を落とす中、しかしそれを見たビルカが言う。
「石の中にはいろんな記憶がある。誰かの記憶ににワタシがいるかもしれない」
「世界は狭いっていうからな」
ありえるかも! と若者たちは声をあげて笑った。それをはたで見ていたヴァールはあきれ顔。
「そんなことあるか」
と言い放った。そして、
「俺の家の前で店を開くな。お前らよそでやれ」
ヴァールが怒鳴りつけると、ビルカと若者たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
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