52「女神ヴァルレインから出産祝いのようです」①





「旦那様!?」

「ちょ、ジョナサン?」


 拘束を力づくで解いたサムと、女神からの贈り物を置いた綾音がジョナサンに近づく。


「――き、気絶している」

「よっぽど驚いたのねぇ」


 まさか敵対している女神から孫娘の出産祝いが送られてくるとは思わなかったようだ。

 だが、ヴァルレインの贈り物が届いたことに驚いたのはサムと綾音も同じだった。


「私だって驚いているわよ」

「俺だってびっくりだよ。出産祝いって敵から送られてくるものなの!?」

「知らないわよ! 送ったことも送られたこともないんだから!」

「そもそも、この出産祝いって開けて大丈夫なものなのかな?」


 サムはアイテムボックスからブランケットを取り出してジョナサンにそっとかける。

 胃と精神に負担が多いジョナサンには、あとで結果だけ伝えればいい。


「視て、みたけど問題はないと思うわ」

「もしかして、本当にただの善意だったりする?」

「……正々堂々していた神だったから、姑息なことはしてこないと思うけど」

「とりあえず、開けてみよう。ただ、ここじゃ何かあった時に困るから、どこか遠くでやろう」

「そうね。じゃあ、便利なタクシーを呼ばないと。変態大魔王はどこにいるの?」

「昨晩飲みすぎて気持ち悪いと言いながら、転移で陛下を王宮に送っていったから……仮住まいの家かな?」


 魔王遠藤友也はサムの叔母にあたるマクナマラ・ショーンと婚約している。

 他にも従者のふたりとも、婚約中だ。

 いずれ結婚するにあたり、新居を探していることは聞いている。

 マクナマラの父、サムの祖父でもあるカリアン・ショーンと同居もするようで、本格的に春になったら中古物件を買うとのことだ。


 現在、友也はウォーカー伯爵家に部屋を間借りしていながら、愛の女神エヴァンジェリンの神殿の聖騎士として仕えるマクナマラの職場の寮に泊まることもある。

 他にも、魔族が住まう大陸西側、無人島、人間の国にも隠れ家をいくつか所有していると聞いている。転移が使える彼なら、どこでも一瞬で行けるだろう。


 最近は、ウォーカー伯爵家にいることが多かったが、サムが休暇を取るのと同じく伯爵家から離れている。

 なぜだろう、とみんなで尋ねてみると、「出産間近の女性にラッキースケベってしまうわけにはいかないでしょう」と真顔で言われてしまい、どう言葉を返せばいいのかわからなかった。


 第一子が生まれたら生まれたで、「赤ちゃんにラッキースケベるわけにはいきません」とやはり真顔で言われてしまい、言葉がなかった。

 どんなラッキースケベだよ、とあとで心の中で思ったが、彼はかりなりに気遣いをしてくれていることはわかったので、無粋なことは言わない。

 実際問題として、友也の懸念通り、万が一シャルロッテにラッキースケベされようものなら、女神の前に魔王と殺し合わなければならない。


「とりあえず、呼びましょう」

「そうだね」


 この世界には携帯電話などの便利なものはない。

 しかし、綾音は窓を開けると大きく息を吸い込み、叫んだ。


「ちょっと、ラッキースケベ大魔王! 用事があるからラッキースケベしていないで、こっちに来なさい!」

「――ちょっと! 外に向かってそういうことを言わないでくれませんか!?」


 瞬く間に友也が転移で現れる。


「これで現れちゃう友也も大概だよねぇ」


 サムも何度かやったことはあるが、便利ではあるが、ちょと罪悪感を覚えた。






 〜〜あとがき〜〜

 シリアス先輩「すぐに返事が来るから、携帯電話よりも便利じゃね? つまりシリアス!」


 ★コミカライズ最新話(第6話―②)が先読み公開となりました!!

 それに伴い、第5話―②が無料公開になりました(第2話の①と②、第3話―①と②、第4話―①、②、第5話―①は待てば無料、もしくは無料チケットでお読みいただけます)ので、ぜひぜひお読みいただけますようお願いいたします!


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 コミカライズ版は書籍版と展開など違う点もございます。コミカライズとしてとても読みやすくなっておりますので、楽しんでいただけますと嬉しいです!

 書籍1巻、2巻もぜひお読みください!

 何卒よろしくお願いいたします!

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