50「やっぱり嫌な話のようです」①




 ウルに対して「頑張ります!」と宣言してしまったサムに、彼女は顔を赤くして部屋から出ていってしまった。


「あらあら、まだ初心ね。微笑ましいわ」


 グレイスが小さく笑った。


「もう、お母様ったら」

「うふふふ。つい、焚き付けてしまったわ。やっぱりウルにも幸せになってほしいのだもの。それに」

「それに、なんですか?」

「サム以外にウルと人生を共にできる人はいないわ。だから、頑張りなさいと応援したの。もちろん、サムも頑張ってね。サムだからこそ、娘を託すことができるのですから」

「きょ、恐縮です」


 ウルと入れ替わるように現れたメイドが、サムに告げる。


「サミュエル様、ジョナサン様がお呼びです」

「ありがとう、行きます」


 サムはグレイスにお辞儀をし、愛娘の額を撫でる。

 リーゼの頬に口付けをすると、手を振って部屋から出た。

 ジョナサンは執務室にいた。


「やあ、サム。すまないね、わざわざ来てもらって」


 昨晩飲みすぎたジョナサンはサム同様に頭痛を覚えているようだ。

 まだ酒の匂いがする。


「可愛い孫に会いに行きたいが、この体たらくだ。グレイスとリーゼに叱られてしまうから、後にするよ。ははは」

「ですね」


 さすがに「そんなことありませんよ」とは言えず、苦笑するしかない。

 何かと苦労が多いジョナサンが少しハメを外したくらいで文句を言う家族ではないのはわかっているが、酒の匂いをさせて赤ん坊に合うのはよろしくない。

 サムも人のことは言えないのだが。


「風呂でさっぱりしてきたらいかがですか?」

「そうしたいが、その前に話をしたくてね」

「話、ですか?」

「そう。シャルロッテに関してだ」

「――嫌です!」

「サム?」

「いーやーでーすー!」

「サム!?」

「絶対に嫌ぁあああああああああああああああ!」

「お、落ち着きなさい」


 もうシャルロッテの名前が出てきた時点で嫌な予感しかしない。

 グレイスが結婚の話が出ていると先ほど言ったばかりだ。

 ジョナサンが改まって、シャルロッテの話を出したと言うことだ、間違いなく結婚関連の話だ。

 生まれたばかりの娘がもうお嫁に行く話など心が耐えられない。

 サムがすべきことは、――拒絶だった。




 ■




「いやー、サムとリーゼの子供が無事に生まれてめでたいめでたい! ウルたちが続けば、私の番もくるってことね。いやぁ、白雪にぶっ殺されて封印された時にはどんなことになるかと思ったけど、まさかこんな未来になるとは思わなかったわねぇ」


 日比谷綾音は、心地よい気分の中、ウォーカー伯爵家の中を歩いていた。

 妹にして、魔王であるヴィヴィアン・クラクストンズこと日比谷白雪が、サムの子供が生まれたと言うのに、見にこないのだ。

 祝い事はみんなで祝うべきだと思っている綾音は、白雪のもとに足を運び、サムに「おめでとう」と言わせようと考えていた。


「――綾音っち様、ちょうどいいところに」

「うん?」


 伯爵家のメイドが綾音を見つけて声をかけてきた。

 なぜか綾音ではなく綾音っちと呼ばれているのだが、綾音自身はあまり気にしていない。

 ただ、鳳凰院朱雀丸の言い出した「綾音っち」という呼び名が浸透していることには腹が立つが。


「どうしたの?」

「実は、愛情と戦いの女神ヴァルレイン様という方から、いつの間にか出産祝いの品が届いているのですが……存じ上げない方ですので、どうしたものかと思いまして」

「――なにそれいみわかんない」


 いずれ殺し合う予定の神から贈り物が届いたことに、さすがの綾音も動揺してしまうのだった。







 〜〜あとがき〜〜

 ヴァルレイン様からの贈り物が届いちゃいました☆

 シリアス先輩「シリアスじゃね?」


 ★コミカライズ最新話(第6話―②)が先読み公開となりました!!

 それに伴い、第5話―②が無料公開になりました(第2話の①と②、第3話―①と②、第4話―①、②、第5話―①は待てば無料、もしくは無料チケットでお読みいただけます)ので、ぜひぜひお読みいただけますようお願いいたします!


 第5話―②には、ルシファー・小梅さんと七森千手さんが満を持して登場です!


 電子書籍にて単話配信が始まりました。

 1話の①、1話の②、2話、3話です。

 ご興味のある方はよろしくお願いいたします!


 コミカライズ版は書籍版と展開など違う点もございます。コミカライズとしてとても読みやすくなっておりますので、楽しんでいただけますと嬉しいです!

 書籍1巻、2巻もぜひお読みください!

 何卒よろしくお願いいたします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る