12「弟の困惑です」③
マニオンは給料こそ出ていないが、ヴァルレインから「お小遣い」として大量の金や銀をもらっているようで、この世界にきてから換金したのでお金は結構持っているらしい。
「ヴァルレイン様に拾って頂いてから修行の日々だったからね。あまり趣味らしいものもないんだけど、様々な世界の言語を覚えて本を読ませていただいたよ」
「……実家じゃ本を読むどころか投げて破って遊んでいたマニオンくんが立派になって」
「…………本当にね。僕にとって遠いことに思えてしまうくらい時間が経ったけど、鮮明に覚えているよ。ただただ恥ずかしい」
「わ、悪い、ちょっと冗談で言っただけだから」
軽口で言ってみたが、話題を間違えたことを察しサムが謝罪するも、マニオンは気にしていないと苦笑する。
「いいんだよ、兄さん。事実だから。それにしても、ぬいぐるみを選んでみたものの、……六人も生まれてくるんだね」
兄と弟で選んだのは、大きなぬいぐるみだ
サムが両手で抱えなければいけないサイズなので、結構なボリュームがある。
ちなみに値段もなかなかするが、マニオンは気にせず支払ってしまった。
半分出そうとするが、マニオンは譲らなかったのだ。
「なんというか、兄さんが年上の女性たちと六人も結婚かぁ。きっとあの時にあった女性たちだね」
あの時、とはマニオンが母親と共に正気を失いウォーカー伯爵家に乗り込んできた日のことだろう。
「正直に言うと、あの日に死んでよかった。罪を重ねなくて、愚かなことをあれ以上しなくて本当によかったよ」
「……マニオン、お前」
「さあ、兄さん。ぬいぐるみはお店の人が運んでくれるようだから、ちょっとお茶に付き合ってもらえないかな?」
断る理由はない。
「もちろんだよ。ぬいぐるみのお礼に奢らせてほしいな」
「ありがとう。遠慮なくご馳走になるね」
サムとマニオンは、雑貨店の店主と店員に丁寧に礼を言うと、店から出た。
特に会話をすることなく三分ほど歩くと、落ち着いた店に辿り着いた。
茶葉を専門の取り扱う店だが、店の奥でお茶も飲める、販売と喫茶店を一緒に行っている店だ。
サムは常連なので店員に挨拶をすると、すぐに席に案内してくれる。
店の奥の一角で、サムとマニオンは向かい合うようにすぐに用意してもらったお茶に口をつけた。
「……いただきます」
「うん」
「ああ、美味しいな。しかし、兄さんはすごいね。さすが貴族というか、宮廷魔法使いというか」
「煽てるなよ。なんか戦ってたらこうなっちゃっただけなんだから」
「……それはそれでどうなんだろうね」
マニオンが苦笑する。
サムは肩を竦めた。
この国に来てから、敵と定めた相手と戦い勝利した。
結果、貴族となり、宮廷魔法使いとなった。
宮廷魔法使いを目指したのはサム自身であるが、一足飛びで宮廷魔法使いになってしまったので驚きの方が大きい。
「少し前に王都に来ていろいろなところを見回っていたんだけど」
「何か気になることでもあった?」
どこかマニオンが言い辛そうに、言葉を選ぼうとして、なかなか適切な言葉が出てこないようで、唸っている。
「僕は男爵家からまともに出たことはないし、男爵家を出てからは碌なことをしていなかったから気づかなかっただけかもしれないんだけど」
「うん?」
「――なんだかこの国、というか、王都……変じゃないですか?」
〜〜あとがき〜〜
マニオンくんの困惑というか疑問は「例のアレ」です。
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