49「オフェーリアの気持ちです」②
オフェーリアは母に向かってにこりと微笑んだ。
「わたくしはサミュエル様のことをお慕いしていますわ」
「――あら?」
あっさりサムへの想いを認めたオフェーリアに、ジュラ公爵は少しだけ呆気に取られた顔をした。
彼女の予想では、娘はもっと気持ちを否定すると思っていたのだ。
「まだ二ヶ月ほどですが、ふたりだけの時間を過ごさせていただけば、サミュエル様が素敵な方だとわかります。自分の気持ちを隠して、あとで後悔するような愚かな真似はしたくありませんもの」
「まあ。オフェーリアも大人になったわね。……肉体面でも大人にしてもらったのかしら?」
「そういう関係ではございません! 仮にも公爵令嬢として婚姻前に、そういうことははしたないといいますか、まだ心の準備ができていないといいますか! もう! どうしてリーゼ様たちもサム様とそういうことをおすすめしてくるのですか!」
「でも、興味はあるんでしょう?」
「それはもう! ――あ、いえ、違います!」
「むっつりな子ね」
「むっつりとか言わないでください!」
ジュラ公爵は、リーゼロッテたちがオフェーリアにサムと肉体関係を進めている理由を知っている。
単純な話だ。
――妻六人がそろって妊娠中なので夫の相手ができない状態にあるからだ。
今まではそれなり相手をしていたようだが、お腹が大きくなってくると、サムが断るようになってきた。
もともとサムは妻を大事にしていたので、妻との時間を大切にしても、身体を求めるようなことはしない。
だが、リーゼたちとしては、サムに尽くしたい。なによりも若いサムが我慢するような状況を作りたくなかった。
そこでオフェーリアだ。
正式に婚約している唯一の女性だ。
他にも、ゾーイ、エヴァンジェリン、カル、ダフネ、ジェーンという魔王、準魔王の錚々たる面々も結婚相手として控えてはいるが、まだお友達からという状態だ。
唯一、一番の付き合いであるダフネも、本性を出しつつあるが、まだサムの唯一無二であるお姉ちゃん的存在を崩したくないようで我慢しているらしい。
他にも、竜王炎樹もサムの伴侶になると公言しているが、こちらは長命種ゆえかのびりしとマイペースだ。聖女霧島薫子もサムに想いを寄せているようだが、最近オープンしたレストランが軌道に乗り、聖女としての仕事も忙しいためサムとの時間が作れないでいる。
リーゼたちの考えを知っているのはイーディスだけではなく、オフェーリアも同じだ。
しかし、十二歳という年齢のため、いくらサムを愛しく思っても肉体関係までの発展は難しいようだ。
サムもがつがつするタイプではないので、相性はいいのだろうが、周囲からすると思うことはいくつかあるのだ。
「サムの夜のお相手がいないことをリーゼたちが気にしているの」
「それは存じています。サミュエル様も、ちょっと困っていらっしゃいましたよ」
「十五歳だものね。夜の生活を気にされると恥ずかしいのは無理はないわ。でも、個人的には心配よ」
「お母様がなぜですの?」
「サムは思春期の男の子よ。力が強かろうと、魔王だろうと、それは変わらないわ」
「理解しているつもりです」
「そんなサム様にあわよくば、と近づきたい女性は多いの。ついでに男性も」
「後者の情報は聞きたくありませんでしたわ!」
「万が一、サムの好みの女が近づいて、ムラムラしちゃったら……ね」
「ね、と言われてもわたくしは反応に困るのですが」
「だからね、リーゼに言ったのよ。私なら喜んでお相手するわって。とても丁重にお断りされたわ。解せないわね」
「……英断ですわ、リーゼ様!」
娘にまでそんなことを言われて、イーディスは頬を膨らませた。
「だから、オフェーリアとサムの関係を進めようと思ったの」
「話が全然関係ないのではりませんの!?」
〜〜あとがき〜〜
ジュラ公爵「私ならいつでもカモン!」
リーゼ「いえ、変な癖をつけられても困るのですが」
ギュンター「呼んだかね?」
ジュラ公爵&リーゼ「呼んでねーよ」
みたいなやりとりがあったとか。
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