46「魔族への悪感情があるそうです」②





「えっと、それで周辺諸国に対して神聖ディザイア国が関わっている可能性はありますか?」

「ないとは言えぬ。だが、大陸東側よりの国ならわかるが、こちらのほうまで影響を当てることができるかどうか疑問だ。女神とやらの力が及んでいる可能性も考慮すべきなのだが、それらはさすがのビンビンを持ってしてもわからぬのだ」

「……うん。最後はいらなかったね」

「必要である! それはさておき、魔族に対して危険視しているのはなにも周辺諸国だけではない。スカイ王国の国民の中にも、不安がないわけではないのだよ」

「それは……変態的な意味ですか?」

「それもある! 他にも、ボーウッド殿のように城下町の人々から圧倒的な支持がある彼のような魔族ばかりが今後来るとは限るまい。人間にも善人と悪人がいるように、魔族にも善と悪があるだろう」

「でしょうね」


 クライドの懸念も理解できる。

 実際、必ずしも悪とは言えないが、サムも魔族と戦ってきた。

 魔王レプシー・ダニエルズだって、復讐が原動力だった。ボーウッドだって、出会いは決していいものではない。


「今後、魔王ダグラス殿のように国を持ち、国民がいる魔王殿とは積極的に交流を重ねていきたいと思っている。可能であれば、周辺諸国にも交流を共にしようと声をかけるつもりだ。すでにダグラス殿には少し話をしている。大陸西側にも人間は多く暮らしているようで、向こうでは人間への嫌悪などはないのでこちら次第で良好な関係となるだろう」

「……王みたいなことを考えているのだな。私はてっきりビンビンしか考えていないと思っていたんだが」

「いや、ゾーイさん、さすがにそれはクライド様が泣くよ!」


 ゾーイの中で、クライド・アイル・スカイはどうなっているのか気になる。

 いや、聞かずともわかる。――ビンビンだろう。


「ふっ。ゾーイ殿、褒めてもなにもでぬぞ」

「……私は! 今! 褒めたか!?」


 ゾーイが叫ぶが、クライドはどこ吹く風のように気にしていない。


「……私的には、魔族を排除したい理由って、変態大魔王みたいな魔族が他にもいるんじゃねーかって恐れられているせいだと思うっすけど」

「それだぁあああああああああああああああああああ!」


 カルもカルだが、サムもひどい。

 しかし、クライドもゾーイも納得したように頷いている。


「奴の場合は、体質が特殊すぎるだけで、魔族でもあんなのは他にいないぞ。というか、いたら大変なことになっているからな!」

「……うむ。わかった。周辺諸国には、変態ビンビン大魔王遠藤友也のような恐ろしい魔族は他にいないと伝えておこう」


 クライドは、そう言うと、思い出したように話題を変えてサムに問いかける。


「ところで、竜の里へ行くようだな」

「ええ、成り行きで」

「青牙殿、青樹殿への教育に関しては私も思うことはある。長命種であるがゆえに、思考も我々と違うのだろうが、私からはひとつである。――滅すでないぞ」

「……そんな破壊神みたいなことしませんって」

「……ウルならばしていただろうから、その弟子のそなたも危ういと言うか、先に釘を刺しておこうと思ったのだよ」


(まあ、ウルなら、青牙たちの教育や、エヴァンジェリンへの扱いなんかを考えると、滅ぼしはしないだろうけど、絶対にボコボコにしただろうなぁ。それ抜きにしても、あ、強そうな竜がいる、喧嘩売ろぜ! とかしていただろうし)


 サムの脳裏には、危機として竜と戦うウルの姿が容易に想像できた。

 しかし、サムは竜の里は興味があるが、竜にはあまり期待していなかった。

 クライド同様に、エヴァンジェリンへの扱いなどをはじめ、思うことはたくさんある。

 炎樹たちのこれからのために、付き合うが、それ以上のことはしないかなと考えている。


「まあ、ほどほどに観光してきます」

「……うむ。周辺諸国に関しては、私たちに任せておいてほしい。だが、一応、こういう動きもあるのだと承知していてくれると助かるのである」

「わかりました。よろしくお願いします」

「うむ。それでは、石動殿にご挨拶しようではないか!」


 クライドは、明るく振る舞い戸棚からいくつかの酒を抱えると、カルの転移でサムたちと一緒にウォーカー伯爵家に転移するのだった。






 〜〜あとがき〜〜

 石動さんとお話しして、竜の里へ。


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