37「神々の会話です」①
戦神ディーオドールは、サミュエル・シャイトたちの住まう世界を管理する『女神』の代わりに見守り続けていた。
自分の管理する世界は基本的に放置している。すべきことをしてあるので、手を加える必要がないのだ。
戦神の世界は、基本的に戦いに満ちた世界だ。
彼は望んでいるのだ。いつか自分と同等に戦える相手が現れることを。世界を管理する傍らで、望む存在を生み出そうとしていた。
だが、しばらくは望みは叶わないだろうとわかっているので、喜んで同僚であり友人でもある女神の世界を――いや、彼女が気にかけるサミュエル・シャイト周辺を眺めていた。
「……それにしても弱すぎるな」
サミュエル・シャイトが魔王レプシー・ダニエルズを倒してから、ずっと彼を中心に眺めていたが、お世辞にも強いとは言えない。
もちろん、『魔王』として、だ。
戦神の世界にも、他の世界にも『魔王』は存在するが、サミュエル・シャイトは『魔王』中では下から数えたほうが早い。
「単純な出力だけなら、一時的に上位クラスの魔王に匹敵するが、普段がよろしくない。……いや、魔王になって半年も経っていない若輩者にそれを言うのは酷か」
友人である『女神』の世界は決して質が低いわけではない。魔法の質は高く、強いものも多い。
サミュエル・シャイト以外の『魔王』は他の世界の『魔王』に引けをとらず、また『準魔王』たちも、世界さえちがければ『魔王』として降臨するに十分な力を持っていた。
サムが弱いわけではないが、未熟なのだ。
戦神という戦い専門の神から見れば、戦力は問題ないが、全体的に見ると合格ではないらしい。
「しかし、あの狂った女神気取りの女を殺すことができるのも……またサミュエル・シャイトか。遠藤友也、ギュンター・イグナーツ、エヴァンジェリン・アラヒー、そしてヴィヴィアン・クラクストンズ、竜王炎樹も同じく狂った女神を殺すことはできるだろうが……ふむ、やはりあの少年か。他にも魔王に至りそうな者は何名かいるが、それらが至るまでにどれだけ時間がかかるか」
ふう、と友人の愛した世界のこれからを憂い、息を吐く。
ウルリーケ・シャイト・ウォーカーの蘇生、転生に力を割いたため、現在は眠りについている。長い眠りの予定だが、その間に彼女の管理する世界はどのくらい時間が経過するのか戦神には不明だ。
「彼女はあの女を世界に送り込んだことを後悔している。できることなら、自分でケリをつけたいだろうに……」
「そうですよねー」
「……お前か。なにをしにきた、虹の女神」
「どーもー」
気だるげに手を上げて空間に音もなく現れたのは、十代半ばくらいの少女だった。
やる気のなさそうな気だるげな顔に、オーバーサイズのTシャツを着ている。首元はヨレていて、だらしなさが目立った。
彼女こそ、魔王遠藤友也を異世界に送り込んだ女神であった。
〜〜あとがき〜〜
神視点でのサムや世界です。
いくつかネタバレのようなそうではないようなことも含まれておりますが、気にせずお読みください。
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