38「神々の会話です」②





「俺は暇ではない。遊びに来たのなら帰れ。いや、そもそもお前はこの世界の管理を手伝う神でもあるだろう?」

「いやー、なんかすみません。でも、戦神さんがお姉さまに頼まれてにやにやしているのがキモいって言うか、放っておいてあげようかなって言うか」

「……なるほど。つまり、死にたいんだな?」

「ちょ、やめてくださいよー」

「ふん。まあいい」


 虹の女神は、サムたちの世界を管理する女神の部下である。

 戦神とも顔見知りであり、軽口を叩き合える仲だ。


「しかし、ちょうどいい。お前に聞きたいことがある」

「はいはいー?」

「遠藤友也を転生させたのはお前だったな?」

「いえーす」

「あれのラッキースケベはなんだ?」

「さあ?」

「どうにかしてやれなかったのか、さすがにあれは哀れだ」

「血も涙もない戦神に哀れに思われるとか、マジ草ですねー」

「……もう少し真面目にできんのか?」

「これでも全力全開です」

「……もういい」


 やる気こそなさそうだが、最低限の仕事はしているようなので戦神もこれ以上文句は言わなかった。

 しかし、戦神にとっても遠藤友也のラッキースケベ体質には首を傾げてしまう。

 異性に好かれやすい人間はいるし、魅了を持つ者がいる。だが、友也のようにラッキースケベだけを持つ人間も珍しい。それが異世界に行って魔王になっているのだから、正直、言葉もない。


「遠藤友也くんに関しては、生まれながらに授かったギフトですー」

「ラッキースケベのどこがギフトなのか俺にはわからん」

「男の子なら、涙を流して喜ぶんですよー」

「そんなものか」

「そんなもんですー」

「いや、待て。しかし、遠藤友也はラッキースケベとイケメンなどが原因で暴行の末に死んでいるんだが……ギフトをもらった人間の末路ではないだろう」

「ですから、死後転生できたんですよー。転移能力まで上げたんですから、やーさしー!」

「つまり魔王に至ったのは実力か。素晴らしい。ラッキースケベを持っていなければ、ぜひ手合わせを願いたかったところだ」

「ちなみに、いつか死を迎えたとき、ラッキースケベがあってよかった! とはならなくても、ラッキースケベがあってもいい人生だったって思えるくらいにはいい人生のはずですー」


 友也の出身である地球の記録から、彼の周囲の人間のその後は見て知っていた。

 暴行し友也を殺した者は、中学生だったとはいえやりすぎてしまい、連日マスコミの餌食になってしまった。メディアに実名こそ出てこないが、情報社会のため、すぐに名前、住所、家族構成などが晒されている。

 しかも、暴行理由が嫉妬だったことも問題となっている。

 加害者はもちろん捕まり、家族は離散、中には名前を変えることなった家族もいれば、生きていることを放棄した者もいる。

 また、友也の親も、保護者としての責務をしていなかったことが明るみとなり、社会的地位を失っていた。


 もちろん、このことを遠藤友也に伝える術はないし、伝えたとしても今更であろう。


「ひとつ疑問なのだが」

「うんー?」

「サミュエル・シャイトはなぜ遠藤友也のラッキースケベという体質を斬り裂かない?」

「斬れるって気づいていないんじゃないかなー」

「……なるほど。確かに、そうか。もどかしいな。……今はまだ斬れないだろうがそのうち斬れるようになるだろうに。こちらに奴を連れてきて鍛えることは可能か?」

「お姉さまに怒られると思うよー」

「……無理なら、仕方がない。だが、このままではあの腐った女神に殺されるぞ?」

「それもまた世界の流れじゃないかなー」

「それはそうだが」

「でも、戦神はまだサミュエル・シャイトの本気を見ていないからねー。私は世界を管理しているから、なんとなくわかるけど、彼は未知数だよー」

「ほう。なぜだ?」

「だって彼は―――――――――――――――――――」


 虹の女神の言葉に、戦神は目を見開いた。


「素晴らしい。サミュエル・シャイトには神々が関与していないのか」

「そういうことー」

「ならば、続きを楽しみにして見守り続けよう。きっと心を躍らせる戦いになるに違いない」


 戦神は楽しそうに笑みを浮かべた。

 もしかすると、自分と戦える存在に育つのではないか、という期待を込めて。







 〜〜あとがき〜〜

 あとあと関係するお話を入れさせていただきました。


 ネタバレにならないネタバレを。

 サムは■■が●●を▲▲ために★★をした@@であり、■■■に〇〇こそ▲▲をされてるわけではないが☆☆☆☆☆いる。

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