13「マクナマラさんの相談です」③





 結論から言うと、クリーもギュンターと同じくデートからやり直しましょう、という提案をした。

 なんでもクリーは始まりこそギュンターと肉体関係だったが、その後、きちんと話し合いをした結果、デートを定期的にしているようだ。

 最初こそ嫌々だったギュンターも、素直に付き合ってくれるようになったと言う。

 順序よく進むことが全てではないが、時には順序も必要だとクリーは経験したという。


 クリーの体験を交えた話に、リーゼも「そうよね」と納得した。

 リーゼもサムも、一夜の関係からだった。

 当時のリーゼは冷静にいられなかったし、サムに自分がふさわしくないと思っていた。しかし、サムはそんなリーゼを愛してくれた。

 身体を重ね、愛し合った。もともと接近戦の修行と、ちょっとしたお出かけはしていたが、恋人としてのデートはしたことがなかった。だからだろう。サムは時間があればリーゼと出かけてくれたし、部屋で一緒にのんびりすることもあった。

 リーゼの人生の中で最も幸せな時間だったと言える。そして、それ以上の幸せが今後も増えていくだろう。


 リーゼだけではない。サムはアリシアを、ステラを、フランを、花蓮を、水樹を、大事にしてくれている。最近はオフェーリアと出かけることもある。


 レイチェルも夫デライトに一目惚れから始まりすぐ結婚となったが、現在は仲睦まじい夫婦としてデートや食事を楽しんでいた。

 リーゼたちの父ジョナサンと母グレイスも、結婚して二十年以上だが現在も新婚のようにイチャイチャしている。


「――そうか。順序か。酔った勢いもあったが、思えば焦りもあっただろう。生き別れていたメラニーは子供がふたり、良き夫がいた。甥っ子なんて妻が六人いて全員孕んでいる! 結婚は諦めたと言いながら、どこか諦めきれなかった部分が私にあったことを認めよう」


 ならば、とマクナマラは立ち上がる。


「先日の出来事を遠藤友也にまず謝罪し、ふたりで飲みにいくところからやり直すとしよう! それで同じことをしたのなら、もう結婚だ!」

「マクナマラ様の思い切りの良さは素敵ですわ!」


 ある意味友也よりも男らしく、一度決めたらあとは行動するだけのマクナマラに一同が応援する。


「では、さっそく遠藤友也を見つけ出し」

「遠藤友也様ならウォーカー伯爵家にいらっしゃいますわ。ギュンター様、サム様とご一緒です」


 いざ友也を探しに、と意気込むマクナマラにクリーが助言をする。

 慌てたのはゾーイやリーゼ、花蓮、水樹だ。

 友也の気配を自分たちでは感じ取れなかったのに、クリーが把握していることにただただ驚いた。

 特に準魔王のゾーイのショックは大きかったようだ。


「く、クリー、なぜわかった。あの変態魔王は気配を消しているのか?」

「おそらく。きっとこっそりサム様にご相談したいことがあったのでしょう。しかし、ギュンター様の匂いと一緒に友也様の体臭もします。ふふふ。ギュンター様もフローラルでエレガンスな香りと一緒ならば私は感じ取れるのですわ! もちろん、サム様も!」

「お前、すごいな!」


 気配ではなく、匂いで離れた誰かを特定してしまうクリーに、ゾーイもマクナマラも、この場にいる面々が関心するのだった。


「あらあら、若いっていいわねぇ。お姉さんも頑張らなきゃ!」


 キャサリンがなにを頑張るのか不明だが、自分よりも若い女性たちの恋の話を聞いて良い休日になったと喜んでいる。


「この家にいるのなら好都合だ! 遠藤友也、待っていろ!」


 部屋から飛び出したマクナマラは、同じく話をするべくマクナマラを見つけた遠藤友也と話をした。

 どのような話をしたのか、気を利かせてふたりだけにしたのでサムやリーゼたちにはわからなかったが、後日、霧島薫子のレストランで楽しそうに食事をするふたりが見掛けられたのだった。







 〜〜あとがき〜〜

 クリーさん、真面目モード!

 実はなんだかんだとギュンターとちゃんとお出かけしていました。


 コミック1巻好評発売中です!

 何卒よろしくお願い致します!

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