12「マクナマラさんの相談です」②





「わ、私は恋愛ごとには疎いが、いくら相手が変態魔王でも責任という言葉で縛ってどうこうするのはよくないだろう」


 ゾーイの言葉に女性たちがうんうんと頷く。


「そうよねぇ。お姉さん的にも、酔っ払ってしてしまったことは一旦置いておいたほうがいいと思うわ。男の子は責任云々を言うと覚悟を決めること逃げる子がいるのよ。もちろん友也くんが逃げるような男の子じゃないとわかっているけど、ちゃんとこれから幸せになれるように事を進めないとね」

「……だからなんでおっさんが……もういい」


『責任』を取れと迫るのは簡単だ。

 実際、ラッキースケベをされた責任を取れと詰め寄ったマクナマラに覚悟を決めた友也が結婚を申し込んだが、それはなにか違うと思ったから断っている。

 一夜を共にしてしまったことは大きな出来事であるが、やはりマクナマラとしてはゾーイが言ったように『責任』という言葉で縛ることはしたくない。


「やはり一度しっかり話し合うべきだな。……ふっ、この年になって失うものはないと思っていたが、私にもまだ乙女のような心が残っていたようだ」

「おい、ツッコミ難いことを言うな」


 スカイ王国第二王女レイチェルが挙手する。


「わたくしは自分からぐいぐいいくタイプですゆえ、少し気になったのですが……一夜を共にした時、酔っ払っていたのはわかりましたが、合体したきっかけはなんだったのでしょうか?」

「合体て……あー、ごほん。それはな――」


 はっきり『合体』と言ったレイチェルにマクナマラが頬を染める。

 毎日合体しているレイチェルにとって合体は日常だが、マクナマラには縁のないことだったので照れもあるのだろう。


「奴はほぼ覚えていないようだが、酔っ払った勢いで奴が童貞だとわかってな。私も酒がいい感じに回っていたせいもあり、よいではないかよいではないかとからかってやるつもりだったのだが、こうムラっと」

「わかりますわ。日の国に伝わる由緒正しきお代官様プレイをなさったのですね!」

「オダイカンサマプレイ……東方の国にはそんなものがあるのか、独自の文化を持っていると聞いたが、恐ろしい国だ」


 残念ながらこの場には「ちげーよ」と突っ込んでくれる者はいなかった。

 ゾーイもツッコミ案件だと思ったようだが、日の国のことには疎いためレイチェルの知識があっているのか間違っているのか判断ができなかったのだ。


「マクナマラお姉様から手を出したといっても、相手はあの遠藤友也様です。酔っていても嫌ならば拒絶したでしょう。あの方は転移も使えるのですから」


 ステラの言葉に一同は「うん、うん」と頷いた。

 世界中を探しても転移を使える者は少ない。その使い手が、逃げずに受け入れたのだから、彼にもその気があったのではないだろうか、と一同は判断する。


「――思えば、十代の頃から寝ても覚めても遠藤友也のことを考えていた。強くなったのもひとえに奴をギャフンを言わせたいと思っていたからだった」


 憎しみではない、ラッキースケベをされた怒りからだったが、その後二十年近く友也のことを想い続けていたマクナマラ。

 恋ではないだろうが、執着はあった。

 そして、スカイ王国で再会し、彼の人となりを知ってとりあえず仲直りもした。

 だが、彼とどうなりたいのか、どうしたいのか、明確な答えが浮かんでこない。

 頭を抱えるマクナマラと、迂闊なことは言えず同じく考える一同。


 そんな時だった。


「お嬢様方、失礼致します! 大先生が、大先生がご到着されました!」


 慌て部屋の中に飛び込んできたメイドの報告に、ゾーイ以外が待っていたとばかりに希望を浮かべる。


「皆様、お待たせしました。愛の伝道師、クリー・イグナーツですわ!」







 〜〜あとがき〜〜

 来ちゃった!


 コミック1巻発売中です!

 よろしくお願い致します!

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