間話「魔法少女戦隊です」
ゾーイ・ストックウェルは、憂鬱な気分を隠せずにいた。
魔王レプシー・ダニエルズに使える準魔王として、多くの敵を屠り、青き戦士と戦場では恐れられた。魔王レプシーが妻子を殺されたことで我を忘れ人間たちに復讐し、その後も、暴れ続けた際、ゾーイが戦力として加わっていればもっと被害が大きかっただろう。
準魔王の中で、最も潜在能力が高く戦闘力も強いのはジェーン・エイドだ。本気を出せば、魔王に匹敵するとまで言われている。カル・イーラは転移魔法を得意とし飄々としているが実力もかなりのものだ。レームとティナのダニエルズ兄弟もレプシーの実の弟妹ということもあり力は凄まじい。ダフネ・ロマックにおいては、魔法を使わせれば右に出るものはいないだろう。
だが、ゾーイも負けていない。速さと剣技を得意とするが、実のところ元聖女であり、神聖ディザイア国が使う聖力と同等かそれ以上の力を使えるのだ。回復魔法、補助なども得意である。しかし、聖女である過去を捨てたゾーイは聖女の力を封じている。
それでいながら準魔王として堂々とした強さを持つのは、もともとの素質もそうだが、努力して強さに磨きをかけたからだ。
いろいろ説明をしたが、準魔王であり元聖女であるゾーイ・ストックウェルの肩書きが、現在増えつつある。
――魔法少女だ。
サムと出会い、他の魔族の面々とともにスカイ王国で生活をはじめたゾーイ。
しかし、スカイ王国を代表する魔法少女ドミニク・キャサリン・ジョンストン宮廷魔法少女に親友認定されてしまったせいで、ジョンストン一家に招かれることが増えた。
ジョンストン家の夫人、御息女たちもとてもよい方々であり、よき関係を築けていた。
そして、気づけば魔法少女を増やして魔法少女戦隊のひとりに加えられていたのだ。
気づいた時には遅かった。
すでに衣装が用意され、ステッキもある。
婦人と御息女たちから一緒にドレスを作りましょうと誘われたとき、ついでに魔法少女の衣装も作られていたようだ。
キャサリンはピンク色の魔法少女だが、戦隊リーダーになるためレッドの衣装を用意している。
他にも、ブラックには魔王遠藤友也がこっそり加えられており、先日、女体化アイドルをしていた際に逸材だと思われたようだ。ついでとばかりに衣装も準備されている。
マスコットにはメルシーが立候補していたのだが、人の姿で生活する日々なので、魔法少女にスカウトし直したらしい。彼女はイエロー枠だ。
キャサリンがレッドになったことで空席となったピンク枠は、ジョンストン家次期当主になることが正式に決まった『初代以来、初めて女性として魔法少女になる』フェリシー・ジョンストンが務めることになっている。二十四歳の物腰の柔らかい美しい女性だが、少女というには年齢が少々――と、無粋なことを言う者はいない。屈強な中年男性に比べたら天と地の差がある。
あとは、グリーン枠だけなのだが、キャサリンが連れてきたのは女体化して幼女となった竜王の息子青牙だった。
本人はやる気満々だ。
しかし、問題が起きた。
青竜である青牙が、グリーンではなくブルーがいいと言い出したのだ。
だが、ゾーイも鎧や雰囲気から青を印象させるのでブルー枠だ。しかも、すでに衣装まで用意してある。
いろいろ面倒になり、あわよくば青牙に押し付けて逃げられるのではないか、と考えたのだが、
「ゾーイちゃんはお姉さんにとって姉妹も同然よ! ゾーイちゃんがいなければ魔法少女戦隊が成り立たないわ!」
と、知らない間に姉妹にまでランクアップされており、逃げるのは難しかった。
ダブルブルーでいいのではないか、と提案してみるが、色が被るのは駄目のようだ。
「――ゾーイ・ストックウェル!」
「なんだ」
「お前に決闘を申し込む! ブルーの座をかけて勝負だ!」
ゾーイはお家に帰りたくなった。
――結論から言うと、ゾーイの圧勝だった。
魔法少女に衣装に身を包んだゾーイと青牙は、眼帯をした謎の男『クライド司令』が見守る中、敵か味方が全身タイツのビンビン仮面が張った厳重な結界の中で決闘をした。
無駄に魔法少女的な大技を使おうとする青牙に対し、攻撃をひょいひょいと避けてドロップキックをかましたゾーイ。倒れた青牙に馬乗りになり、ステッキで殴打した。
幼女が幼女を気絶するまでぶん殴るというなかなか過激な光景が広がり、みんながドン引きするも、いろいろストレスが溜まっていたゾーイがすっきりしたとばかりに満面の笑みを浮かべて返り血を拭う姿に誰もが口を閉じた。
「――認めよう。ゾーイ・ストックウェル! お前がブルーだ!」
「しまった。つい、苛立って勝ってしまった!」
さすが竜だけあって青牙は散々ステッキで殴打されてもピンピンしていた。
ゾーイは自分の失態を悟るが、あとの祭り。
結局、ブルーはゾーイ。グリーンが、青牙に決定したのだ。
後日
――スカイ王国王宮で新たな守護者として魔法少女戦隊マジカルラブラブハードとしてお披露目会が行われたが、ゾーイだけが虚な目をしていたのはまた別のお話。
「わ、わたくしもドミニクに負けてはいられません! 逸材を揃えなければ!」
クリーの母であり魔法少女でもあるシフォン・ドイクがキャサリンに対抗すべく動き出すのだが、やはりそれも別のお話。
〜〜あとがき〜〜
最強の魔法少女戦隊ができつつあります。
コミック1巻好評発売中です!
何卒よろしくお願い致します!
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