コミック1巻発売記念SS(裏)





 シリアス・ザ・シリアスことシリアス先輩は、『いずれ最強に至る転生魔法使い コミック1巻』を読み終えて、静かに机に本を置いた。

 ふう、と丸眼鏡を外し、うーん、と伸びをするシリアスさんは、黒髪をショートカットに切り揃えた小柄な少女だった。

 すらりとした細身の身体には、なぜか地球の日本ではあまり珍しくないセーラー服を身につけている。

 十五歳ほどの美少女なシリアスさんは、「さて」と椅子から立ち上がると、叫んだ。


「――なぜ、私が表紙じゃないんだ!?」


 本編に一度も出たことない分際でなにを言っているのだ、と突っ込んでくれる人は誰もいない。


「そもそもこの表示のボーイは誰だ! あ、サムか! お前、変態を集める特異点のくせにこんな可愛らしい顔をしていたのか! そりゃ、ウルもリーゼたちもショタに目覚めるな!」


 ウルたちが聞いていたらぶっ飛ばされることを平気で言うシリアスさん。


「裏表紙もウルとサムだぞ! 本編で活躍しておきながら、おのれ! 影のうっすいデリックや、ラインバッハ男爵家の面々まで出ているのにコメント欄のアイドルである私が出ていないとか――ゆ゛る゛さ゛ん゛!」

「えー、シリアス先輩なに怒っているんですかぁ、超うけるんですけどー」

「貴様……変態後輩!」

「どうもー」


 変態後輩こと、変態ちゃんは大きめのニットを着たゆるふわ系の女子だった。

 シリアスさんが綺麗め美少女ならば、変態ちゃんは可愛い系美少女だ。


「ていうかー、私たちは概念なんですから、コミックに出られるわけないじゃないですかー。う・け・るwww」

「貴様ぁあああああああああああああああああああ!」

「そもそもー、この作品って、サムさんがギュンギュンさんと愛を育てるハートフルストーリーなんでー、シリアス先輩の出番なんてないんですってー」

「……お前は何を言っているんだ? 正気か?」


 シリアスさんは変態ちゃんに怯えた視線を向けた。

 しかし、変態ちゃんは自分の言葉を信じて疑っていないようで、サムとギュンターがどれほど純愛か語っている。

 きっと世界線が違うのだろうと思い、スルーしておくことにした。

 そもそもコミック一巻にギュンターは出ない。


「ごきげんよう。皆様がお集まりと聞いて、わたくしも遊びに来ましたわ」

「出たな。彗星の如く現れたビンビン師匠!」

「おーほっほっほっほ! 皆様、よきビンビンをしていらっしゃいますか? わたくしは今日も元気にビンビンですわ!」

「相変わらず狂ってんなー。思えば、クライド・アイル・スカイがレプシーから解放されたせいでビンビン師匠が現れんだよな。つまりレプシーが悪い!」


 もちろん、クライドはコミック一巻に出てきていないし、ビンビン要素もない。

 コミックはまだシリアス先輩の独壇場だ。


「しかし、連載が始まり、気づけば900話を超え……読者様方のおかげだな。コミックをぜひ買ってこれからも応援してほしい。本編連載もまだまだ続くのでよろしくお願いします!」

「みんなサムとギュンギュンのラブラブを見守ってねー!」

「皆様の応援次第ではコミックでビンビンが見られるでしょう! よろしくお願い致しますわ!」

「いや、見たくはねーだろ!」


 はぁ、とシリアスさんがため息をつくと、携帯のアラームが鳴った。


「あ、派遣の時間だ。最近、新しい仕事ができたから私は行くぞ! お前たち、ちゃんと宣伝しておけよ」

「えー、シリアス先輩ばっかりずるーい。私もついてくー」

「わたくしてもご一緒して差し上げてもよろしくてよ!」

「ばっ、馬鹿野郎! せっかくシリアスができる世界なのにお前らを連れて行ってたまるかー!」


 シリアス先輩は走り出す。

 世界と世界の境界線をぴょんと飛び越えて、今日もシリアスを届けるため頑張るのだ。


 頑張れ、シリアス先輩!

 負けるな、シリアス先輩!

 世界のシリアスは、君の手にかかっている!





 〜〜あとがき〜〜

 お前ら概念が出てくるなー!


 はい。とう言うわけで。本日、コミック1巻が発売です!

 愉快な記念SSを書いてしました……怒られるかもしれませんがアップします(笑) 

 不思議なことに気付いたらワードに書いてあったんじゃよ。きっと妖精さんの仕業です。


 大変ありがたいことに、コミック1巻をお届けできることとなりました。

 戯屋べんべ先生をはじめ、コミックに関わってくださった方々に御礼申し上げます。

 そして、お読みくださる読者様たちにも心からの感謝をお送り致します。

 ぜひコミック1巻をお手に取ってくださると嬉しいです。

 よろしくお願い致します


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