35「エルフの女王に会いました」③





「いかん! いかんぞ! まさかとは思うが奴らを解き放つつもりか! いくら魔王様とはいえ、許されん!」

「奴らは隔離していなければならぬ! せっかく忘れていたと言うのに、なぜ奴らを思い出させるのか!」

「いくら魔王様とはいえ、エルフたちを全員敵に回してただですむと思うのか!」

「えー、なんで、そんなに怒ってるの? ダークエルフさんがなにをしたって言うんだよぉ」


 せっかくダークエルフに会いにきたというのに、こうも反対されると逆に会いたい気持ちが強くなっていく。

 エルフとダークエルフがどんな因縁があるのか、興味深くもある。


「サム殿、ダークエルフは恐ろしい生き物でのう。そうよな、我らエルフが光であれば、ダークエルフはその名の通り闇よ」

「……エルフが光属性とか笑わせてくれますね。普段の言動を省みろってんだ」

「助平魔王殿には言われたくないですのう! あー、ごほん」


 茶々を入れた友也にエステルが不満そうな顔をする。


「えっと、女王様。どうしてダークエルフと会ったらいけないんですか? というか、ダークエルフさんたちはどこにいるんです? この里?」

「ダークエルフは、遠い島に住んでおるのだよ。エルフの里からゲートでひとっ飛びできるのだが、基本的に行き来できないよう見張っておる。魔王遠藤友也様ならば転移術で問題なく行けるのだろうが、こうして筋を通してくだっさようだのう。だからと言って、長年、ダークエルフを見張ってきたエルフとしては、はい、そうですか、と会わせるわけにはいかぬ」

「だーかーらー! なんで!?」

「奴らダークエルフは……触れた者の生気を奪うエナジードレインを持つ恐ろしい種族なのだ。それでいながら、男女問わず性的に襲ってはいろいろな意味で搾り取るのだぞ!」

「サキュバスぅ!」


 この世界にいるかどうかは知らないが、サムの脳裏にはサキュバスが浮かんだ。


「今は、必要以上に他の種族と会わせず、自給自足をして暮らしてもらっておる。かつて、人間や他種族と敵対し争っていた過去があったので、本人たちは不満なくしておるのだ。いたずらに刺激して、外の世界に興味を持たれては困る!」

「……と、いう建前を言っていますが、ようは同じエルフでも種族として上位のダークエルフが面白くないという老人たちの意見です」


 女王の言葉に、ダフネが冷たい声で笑った。


「こら、ダフネ! お前も、かつてはお淑やかった子のはずが、我らに隠れてダークエルフに会いにいっていたせいでこんな卑猥な子になってしまったのではなか!」

「失礼な! ダークエルフたちは関係ありません! 私はもとから卑猥です!」




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